そして悪魔は笑う
□決断のとき
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「私ね、橘先輩から告白された」
「…………なにっ!?」
つぶやくほどの声で言った律歌に対し、神尾は大きな声を上げた。
「お前、それなのになんで溜息吐いてんだよ。OKしたんだろ?」
「……してない」
「は?」
「保留にしてもらった」
「はぁぁあぁあ!?」
「うるさい」
「なんで?好きなんだろ?」
「それはそうだけど……」
律歌にはわからなかった。なぜ自分は悩んでいるのか。そしてそのことが橘と付き合うことに待ったをかけていた。
「モヤモヤするのよ、なんか」
「モヤモヤねぇ……」
「初めてよ、こんな気持ち」
悩んだことがなかった。今まではすぐに決断ができるものばかりだったから。しかし、今回は自分でもわからない気持ちであったため、対処の仕方がわからなかった。
「ま、悩めばいいんじゃねーの?」
「他人事だと思って簡単に言ってくれるわね」
「そうは言ってねぇよ。誰だってスゲェ大きいことで悩んだり、どうでもいいことで悩んだりするんだ」
神尾は椅子から立ち上がり、律歌の傍へと寄った。そして再び口を開く。
「どんなに完璧な人間でも悩むときだってある。お前は今、そういうときなんだよ」
(……そっか。今、わかった)
律歌は初めての気持ちが何なのか理解できた。そして、
(私、アキラのこと……)
同時に心のわだかまりがスッと消えていった。
「……アキラのくせに、知ったような口を」
「悪かったな」
「でも、なんかスッキリした」
そう言った彼女の表情に笑顔が戻っていた。
「ねぇ、アキラ。私たち付き合わない?」
「…………は?」
神尾の思考が飛んだ。
「…………フンッ、もうそういったお前の考えには乗らねぇよ。どうせお前のことだから三角関係になったらおもしろそー、とかでも思ってるんだろ?」
「フフッ、バレちゃった。さすが幼馴染」
そう言った律歌。今度はいつもの悪魔のような笑みを浮かべた。
「ねぇ、アキラ。私の考えを見抜いたご褒美に、いいこと教えてあげる」
「いいこと?」
「この部屋のね、そことあそことあそこ。それから……」
律歌は次々と指をさしていく。全部で10か所だ。
「今言った場所に全ての盗聴器と隠しカメラ、仕掛けてあるんだ」
「………………何だとぉぉぉおぉぉお!?」
悪魔のカミングアウトにより、神尾の捜索が始まったのであった。
「おい、あとどこにある!?」
「あっちとそっちと向こうかな?」
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