そして悪魔は笑う
□最後の悪戯
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律歌は橘と付き合い始め、1ヶ月が経とうとしていた。
「明日、楽しみです。桔平さんの手作りのお弁当」
「俺としては律歌が作ってくれたものも食べてみたいな」
「なら、来週作ってきますよ。味は劣るかもしれないですけど」
「ハハ、楽しみだ」
「とうとう雪館さんと橘さん、ラブラブだよな」
「前からお似合いだったしな」
「俺、実は雪館さんのこと狙ってた」
「俺も。マネージャーになったからチャンスあると思ってた」
石田、桜井、内村、森が2人のやりとりを見ながらそう話していた。
「神尾は何とも思ってないの?」
そんな中、伊武は神尾に尋ねた。
「何がだ?」
「雪館さんと橘さんが付き合ったこと」
「別に何とも思ってねーよ」
「本当に?」
「……どういう意味だ?」
神尾の答えに伊武は深い溜息を吐いた。
「……今まで一番近くにいた幼馴染がある日、急に自分から離れたんだよ。普通、少し寂しいとか思わないのかなぁ……アキラは冷たい人間だなぁ……雪館さんはアキラを選ばなくて正解だったよ」
「なんでそこまで言われなきゃならないんだよ」
「まぁ、アキラは雪館さんより杏ちゃんの方が好「だぁぁあぁっ!これ以上言うな!橘さんに聞こえる!」」
伊武の言葉を遮るように神尾は大きな声を出した。聞かれてないかと橘の方を見るが、彼は律歌とのおしゃべりで聞こえてはいなかった。
「でも、雪館さんは良かったのかな?」
「何がだ?」
「……鈍いなぁ、アキラは。本当に雪館さんが可哀そうになってきたよ」
「どういう意味だよ?」
「雪館さん、アキラのこと好きだったんでしょ?」
「は?」
「本当に気付いてなかったの?神尾、本当に鈍すぎるよ」
伊武の言葉とほぼ同時くらいに休憩が終わった。その後ずっと、神尾の頭の中では1ヶ月前の記憶がよみがえっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
帰宅後、神尾は律歌に電話をした。
prrrr……prrrr……
『どうしたの、アキラ』
「その……勉強を教えてもらいたくて」
『教科は?何ページ?』
「電話じゃなくて、お前の部屋行くよ。いいか?」
『いいよ。待ってる』
電話を切ると、神尾は必要なものを持って律歌の家へと向かった。彼女の母親に出迎えられ、目的の人物が待っている部屋へと行った。
ガチャ
「いらっしゃい、アキラ」
ノックもせずに入ってきた幼馴染を、律歌は顔を机に向けながら出迎えた。どうやら彼女も勉強をしていたようだ。
「悪いな、突然で」
「いいよ。待ってて、今、机用意するから」
そう言って律歌は椅子から立ち上がり、神尾のために小さな机と座布団を用意した。
それからは2人で勉強を始めた。主にわからない神尾が律歌に聞き、彼女が教えるといった形で。
途中で律歌の母親が来てジュースを持ってきたところで、休憩することになった。