そして悪魔は笑う

□最後の悪戯
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「橘さんとはどうなんだ?」

「フフ、順調よ。桔平さん優しいしちょっと天然だから、私がイタズラしても気付かないの」

「お前な……あんまり橘さんを困らせるんじゃねーよ」

「で、アキラが今日来た本当の目的は何?」


幼馴染だからというべきか、律歌には神尾の目的はわからずとも別の目的があるのだと感づいていた。


「その、最近お前と話してないなーと思って」

「そういえばそうね。桔平さんに夢中で気がつかなかった」

「……本当にそれだけか?」


神尾は今日、伊武から言われたことから、ある考えを察していた。


「お前、俺を避けてないか?」

「……どうしてそう思うの?」

「……もしかしてだけどよ……お前、あのときの……本気だったんじゃないか?付き合わないか、って。お前が隠しカメラや盗聴器を全部言ったのだって俺から離れるためなんじゃないかって……」

「…………」

「そうだとしたら、ゴメン。俺、お前のこと傷つけた。お前の本気をジョークだと思って軽く流しちまった」


頭を下げる神尾。それを見た律歌はしばしの沈黙の後、口を開いた。


「アキラ……勘違いしてるんじゃない?」

「は?」


律歌の言葉に、神尾は間の抜けた声をあげた。


「さっきも言ったでしょ。私は今、桔平さんに夢中なの。そんな私が桔平さんの方を向いていたら、アキラと会話が少なくなるのも当然」

「そ、そうだな」

「それに、カメラも盗聴器もお金がかかるのよ。いくら私が株で儲けてるからって、そう何台も買えないわよ」

「ちょっと待て。お前、今何て言った?」

「株で儲けてる。株なんて小学生から買えるから」

「違う。その前だ」


カメラも盗聴器も……そこから、神尾はある予想をたてた。


「つまりは……橘さんに盗聴器や隠しカメラを設置するために、俺のところの全て撤去したと」

「そうよ」


神尾は肩透かしをくらったかのような顔をした。それを見て律歌が笑った。


「ありがとう、アキラ」

「何がだよ!」

「少しでも私のこと思ってくれたんでしょ」

「ま、まぁ、そうだけど……」

「ありがとう。だから……」


律歌は神尾に近づき、彼の両目を片手で隠した。







――――アキラへの思いとイタズラは、これで最後にするね。







顔が近づいていき、重なったのは互いの唇だった。それに神尾は反応できないでいた。

しばらくしてゆっくりと律歌から唇を離した。


「……な、な、なっ、何すんだ!?」

「キス」

「はっ!?キ、キスって、お前、なんで!?」

「はいはい、落ち着いて。桔平さんにはヒミツよ」

「当たり前だ!こんのぉっ、悪魔っ!あくまぁぁあぁ!」


神尾の慌てようを楽しく眺める律歌。顔には最近では見られなかった悪魔の笑みがこぼれていた。


「ねぇ、アキラ」

「何だっ!?」

「大好き!」


そして悪魔は笑った。
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