そんな彼女と学園祭!
□8月23日(火)
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〈朝〉
「やぁ、そこの綺麗なお嬢さん」
会場へと向かっている。今日は昼からアトラクションのミーティングがある。
「ちょ、ちょっと、お嬢さん?」
昨日はなれないことをやったから疲れた。
「おーい、そこの氷帝学園の女の子ー」
聞こえてきた声に誰のことかと辺りを見渡せば、氷帝学園の女の子は私しか見当たらない。
つまりは、先ほどから声をかけてきている人は私に用があるらしい。
「何かご用ですか?」
「あぁ、やっと止まってくれた」
声をかけてきた人――――見たところ山吹中の方だけど、山吹中には仁しか知り合いがいない。
もしかして、仁の喧嘩友達で私とも喧嘩したいとか……。
「キミ、すっごく可愛いね!」
「へ?」
「その間の抜けた反応もいいね」
どうやら喧嘩を売る気はなさそう。
とりあえず、褒められているようなのでお礼を言っておいた。
「ねぇ、キミの名前は?」
「……服部藤子です」
「藤子ちゃんっていうんだ。俺は千石清純。清らかの“清”に純粋の“純”で清純だよ。気軽にキヨとか、キヨちゃんとか呼んでいいから」
「わかりました。千石さんって呼びますね」
「ハハハ、全然わかってないね……まぁ、いいや」
ところで、千石さんは私に何の用事だろう?喧嘩なら断ろう。
「藤子ちゃん、ボクとキミの運命の出会いを記念して、今度デートしない?」
「嫌です」
「清々しいほどキッパリ断ってくれるね……じゃあ、どうしたらデートしてくれる?」
困ったな……千石さんがなかなか諦めてくれない。
ここは延髄切りで……いや、昨日の誓約書と滝先輩の言葉を思い出せ。ここで延髄切りは間違いだ。
私は何かいいアイディアを考えた。
「……千石さん、勝負しません?」
「勝負?」
「鬼ごっこです。鬼は千石さん。ここから会場まで、私が逃げ切ったら千石さんは諦めてください」
「うん、いいよ」
ここから会場までは約80メートル。私の足の速さは100メートル14秒。これならなんとか逃げ切れる。
「じゃあ、十数えてくださいね」
よーい、スタート。
「いーち、って早っ!?」
とにかく走る。後ろは振り返らない。私とデートしていいのは私が許した人と蓮二さんだけよ。
会場に着いてからも足を止めることはなく、一定のスピードで氷帝の会議室へと向かうことにした。