日吉君の隣の席の彼女
□#15
1ページ/3ページ
「やったよ、日吉君」
「何がだ?」
「テスト。1位かもしれない」
テスト終了後、服部が真っ先に俺に言った言葉だった。
氷帝学園のテスト。上位者は点数と共に掲示板に張り出される。
張り紙の前では人が集結していた。そして生徒達が口々に言っている。
「今回の1位は服部藤子か」
「才色兼備とは彼女にふさわしい言葉だな」
服部は見事に有言実行を果たした。恋の力が働いたのだろう。
俺は順位表を簡単に見てから教室に戻った。
「1位、おめでとう」
「ありがとう」
服部は目を雑誌“月間格闘技”に向けたまま言った。しかし、口元が弧を描いており、ご機嫌だった。
「今日、柳さんに報告する」
「そうか」
「テスト期間でろくにメールしてないんだ」
だからこんなに嬉しそうなのか。さすが恋の力。
「それより、次、音楽だよ」
「……そういえば」
俺は今から服部に残念なお知らせをしなければならない。
急に何かを思い出した俺に、服部は目線を俺に向けてきた。
「今日は歌のテストがあるぞ」
.