日吉君の隣の席の彼女
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服部はこの世の終わりという顔をした。
音楽の授業に服部は出なくてもいい。しかし、テストは受けなければならない。出なければ0点扱い。そして補習だ。
音楽で補習になる人間はまず、いない。
つまり、もし服部がテストを受けなかったら……間違いなくG(ゴ○ブリ並の生命力である榊)と2人きりの補習授業だ。
精神的にダメージを受けてしまったのかフラフラと歩く服部が可哀想に思えた。
「藤子、やっと私のところへ来てくれたのだな」
手を広げて向ってくるG。服部はヤンキーキックを腹部にお見舞いしていた。
「勘違いしないでください。歌のテスト受けにきただけです」
「私に会いに来てくれたのだな」
「気色悪いんだよ、薔薇男が。ヅラのくせにポマードつけてくんな」
「そうか。そんなに会いたかったのか」
どこをどう捉えればそう聞こえるのだろうか。
授業は始まり、最初にGからの説明が始まった。
「……というわけだ。質問はあるか?」
誰も手を挙げない。そして何故だか笑いを堪えていた。
「どうした?何かおかしいところでもあるのか?」
先ほどの服部のキックによりヅラがずれているのを誰も教えないまま、歌のテストが始まった。
皆、Gの頭に目線を合わせないように歌っている。
しかし、全員がニヤニヤして歌うという最悪な状況になっていた。
「全員、嬉しそうだな……何か面白いことでもあるのか?」
お前の頭だよ。
ピアノを弾いているとき、身体を前後に揺らしながら弾くから徐々にヅラがずれていく。
なぜ今日に限ってきちんとヅラが固定されていないのだろうか。