日吉君の隣の席の彼女
□#29
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「丸井」
「何だよぃ」
少し怒りを含んでいる声で返してきた。
「幸村から頼まれた。お前は痩せるために美容組に入っているのだろう。そうだろう。だから俺の考えたダイエットプログラムをサウナに入る前に読んでおけ。わかったな、このブタが」
「は、はい……」
俺は先ほど手にした紙を丸井に渡した。念のためにサウナに入る直前に読んでおけ、と言っておいた。
あえて直前に読ませることにより、その分の時間を稼ぐためだ。
「頑張ってるね、柳」
「滝か」
「僕も協力するよ……というより、僕は藤子ちゃんの協力だけどね」
何を考えているかはわからない男だが、協力してくれるなら心強い。俺は滝に丸井の足止めをしてもらうよう頼んだ。
さて、他の奴らだが、金色と一氏は野次馬根性が心配だが大丈夫だろう。ジャッカルはサウナ内で鍛え始める確率、95パーセントだから問題ない。樺地も大丈夫だ。
残り一人を何とかしようと、俺は脱衣場へと向かった。
「姉ちゃん、まだー?」
女性脱衣所の前で服部を待つ遠山。早く行きたくて仕方がないのだろう。
「遠山」
「ん、何や?」
「服部と2人きりで話がしたいんだ。だから、先に行け」
「え〜」
「アイスを奢ろう」
「わかったで!」
遠山が去っていったのを見届けてから、俺はすぐに脱衣所へタオル生地の服に着替えにいった。
「金ちゃん、お待たせ……って、金ちゃん、どこ?」
着替え終わった服部がキョロキョロしながら遠山を探す。