日吉君の隣の席の彼女

□#37
1ページ/4ページ

日常には偶然というものがある。しかし、重なりすぎると最早、奇跡としか言えない。


「おはよう、日吉」

「おはよう」


1泊分の着替えなどを入れた鞄を持って、俺は鳳と旅行に行くことになった。

福引きで1等の旅行券を当てた鳳。最初は宍戸先輩を誘ったらしいが、断られてしまったようだ。

だが、正直なところを言って男同士で、しかも二人だけの旅行というのは少々……いや、かなり抵抗があるが、そこは中学生だから別にいいだろう、という考え方で変な方向には考えないでほしい。


「あれ、日吉と鳳やん」

「ほんまや。おーい、日吉、鳳」


目的地の旅館へ行こうとしたところ、偶然にも同じ部活で“氷帝の変態”と名高い伊達眼鏡と、残念ながらもその変態と従兄弟である忍足謙也さんと出会った。


「あ、こんにちは、謙也さん」

「お久しぶりです、謙也さん」

「おぅ、久しぶり」

「ちょい待ち。俺のことは無視かいな」

「いたんですか、伊達眼鏡。どおりで目障りだと思いましたよ」

「生きていてごめんなさい」


鳳の黒い部分が発生した。そのせいで眼鏡が角の方で体育座りしながらジメジメとしている。気持ち悪い。


「日よ……キノコが生えそうだね。ね、日吉」

「………」


W忍足も福引で旅行を当てたらしい。しかも目的地も一緒だったので、俺たちは四人で行くことになった。

それから旅館についてチェックイン。この旅館の醍醐味はなんといっても温泉。そして豪華な懐石料理である。
たかが福引にここまで素晴らしい賞品があるとは思わなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ