日吉君の隣の席の彼女
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「よぉ、日吉」
「……忍足先輩。おはようございます」
「おはよ」
朝から忍足先輩に会った。正直言って運がない。
「日吉は藤子ちゃんと同じクラスでええなぁ」
いつもこの人と会うと必ず服部の話になる。止めてほしい。
早く向日先輩が来てくれないかと願う。
「あ、侑士〜!日吉〜!」
後ろから向日先輩の呼ぶ声がした。やっとこれで忍足先輩から逃れることが出来る。そう思って振り向いた。
「げ……」
「藤子ちゃん、今日も美人さんやな」
「…………」
なんて向日先輩はKYなのだろう。服部が忍足先輩好きじゃないことを知ってるはずなのに連れてきたよこの人。
服部が明らかに嫌そうな顔をしている。
俺にむけて目で合図してくる。『はやくその眼鏡を連れて行け』と。
だが、その合図は虚しく終わる。忍足先輩が服部に近づいたから。
「おはようさん、藤子ちゃん」
「さようなら、眼鏡」
「眼鏡ちゃうやろ。侑士先輩や」
「帰れ、眼鏡」
「そないツンデレにならんでも」
「帰れ、眼鏡」
「いつ見てもえぇ脚やなぁ」
「消えろ、眼鏡」
セクハラ言葉とほぼ同時に忍足先輩の顎めがけて服部はアッパー、向日先輩はラケットのガットを忍足先輩……いや、眼鏡の頭上目掛けて振り下ろした。
倒れた眼鏡を無視して俺たち3人は歩き始めた。
「それにしても、侑士もこりねぇよなー。でも、あいつ殴るのはスカッとするぜ!」
「岳人先輩、できればもっと早く助けてくださいよ」
服部がそう言えば向日先輩は笑顔で、
「だって侑士殴るの楽しいじゃん」
と答えた。その無邪気な笑顔がとても残酷だ。
3人で話しながら学校へ行った。後ろから眼鏡が『待ってや〜』と言っていたが無視だ。