小説
□銃使いの王子
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違うよ。リードの足速いなって思ってね」
頼みごとをする相手に銃を乱射するなんて聞いたことがない。ときどき後ろを確認しながら、路地を抜けた。やっと少年の姿が見えなくなる。俺の逃げ足についてこられる者などいないのだ。のんびりと歩き出した俺の背後で、立て続けに銃声が路地に響き渡った。少年が再び走って来るのが見えた。それに、少年の後ろに見知らぬ男を確認した。
今度は少年が見知らぬ男に追われている。大柄な体格で、真っ赤に染めた髪でピアスをしていて見るからに悪そうな顔だ。このまま真っ直ぐ路地を突っ切ると、住宅街だというのに発砲してくる。危うく俺の肩に銃弾が当たるところだ。俺巻き込まれている? 巻き添えだけはごめんだ。
「あ、ちょっと待ってよ」
俺が今の内にと、全力で逃げ出したのを見て、少年が俺を追って来た。
「そういうお前も余裕あるのか? 誰かに追われてるみてぇだが?」
「あいつは、ドレイク。あいつのせいで、ちょっと困ったことになってるから協力してくれないかな?」
俺はふと立ち止り、舌をあからさまに見せびらかした。
「嫌だ」
その瞬間、耳をつんざく銃声がした。耳をかすめた。ドレイクとかいう男は少年と俺の区別をつけずに撃ってきた。全く冗談じゃない。俺は、そいつに、コルト・パイソン・リボルバーで撃ち返した。コルト・パイソンはただでも高級な銃で、俺の愛用しているのは初期の頃のものだから更に高値がつき、銃身が青みを帯びた黒色をしているのが特徴だ。
「お前恨まれやすいタイプだろ?」
俺の質問に少年は苦笑いをした。
「あいつは、誰かれ構わず撃つよ。少しは助けてくれる気になった?」
「面倒ごとは嫌いなんだ」