短編小説
□愛をくれ!
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「またまわってみるか?」
「うん...」
さっきのすごい人混みでバイトを探してることを忘れていた
「次はあっち行ってみるか?」
「うん」
まだみて回ってないところを行こうとしたとき
「お兄さん」
「え?」
「バイト探してるの?」
いかにも怪しいって感じの男が話しかけてきた
「いや、俺、売りとかヤバイ系の仕事する気はないから」
お断りしたほうがいいと思った俺はキッパリ言った
「誤解されちゃ困るな」
その男は苦笑いしながら言った
「俺はイベント会社でプランナーの仕事をしてるんだよ。あのデパートのリニューアルオープンセレモニーも俺の企画」
俺は怪しい者ではないと証明するように名刺を差し出す
「企画部長...高瀬弘之?」
「そう!怪しくなんかないだろ?」
「まあ...」
「実は、今日のイベントの花を活けてくれた華道家の伊吹成一先生が、住み込みで働ける男の子のアシスタントを探してるんだ」
伊吹成一...
さっきのデパートに花を飾ったっていう...
あいつ!?
「アシスタント?」
「そう。7月いっぱい、夏休み全部を使って先生の仕事を手伝うだけ!日給二万円出すって。やってみないかい?」
「日給二万円!?」
思わずすっとんきょうな声をだしてしまった
一日二万...
何ヵ月分かせげちゃうだろう...
たくさんがかせげちゃう!
なら...
「やる...」
「え、倭?」
「俺、やる!」
「そうこなきゃ!じゃあ、先生のところに案内するね」
「おっおい、倭」
「こんなおいしい仕事なんてないよ!」
「そりゃそうだけど...」
心配そうにしてる純平
「大丈夫!」
「ほら、行くよ」
「じゃ、ありがとな!学校で」
俺は笑顔で純平に手をふる
高瀬さんと一緒に伊吹成一ってやつのところに向かった
「つれてきたよ、成一」
「おつかれ、ありがとな」
あれ?伊吹成一にむかって呼び捨て?
「自己紹介して」
「あっ、紅音倭です。高校1年生です...一生懸命がんばりますのでよろしくお願いします!」
「倭か、よろしくな」
いきなり下の名前で呼ばれ、ドキってしてしまった
「あの...俺、花とか全然わからないし...アシスタント務まりますか?」
不安だった俺は、勇気だしてきいてみた
「知識はいらない」
よかった...
なんとかなるみたいだ