陽炎の森

水が鼻孔や口の中に
侵入する
ざばぁっ
上へ上へもがくほど
大岩をくくりつけた
綱が繋がれた私の足首に
食い込み
手首も大岩は繋がれて
いないものの同様に
縛られてとてもじゃないがほどけない
『…息が続かない』
暗い絶望は感じなかった
ただやり遂げられなかったことに対する後悔、
そんな意識が
無くなる寸前の私の
深い溜息から泡に
なって水面に上がって
いく
水面の方で私が吐き出した泡より多い泡が
ぶわっとできた
微かな意識の中で
それが人間だとわかる
死んだか確かめに来たか
ただの死体漁りか
どっちでも良いが
その人間はぐんぐん
凄まじい速さで
沈んでいく私に
向かってくる
大きな手が伸びてきた
ふっ、と私の意識が
切れる
深い深い昇れない
永遠の水底に落ちて
いく
私はその中で大きな手に
抱かれる夢を見た

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