雷神様と百鬼夜行!

□雷神様と女郎蜘蛛
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「―――……」




 日曜日の夜。
 縁側で月見酒をしていた零は、月を見上げて物思いに耽る。




「……奴良組、か…」




 雪女から聞いた。
 奴良組―――関東一帯を納める任侠ヤクザ組。総大将、ぬらりひょんを筆頭に、今は三代目決めに手間取っている、と。そしてその三代目に――――奴良リクオの名前が、上がっている。




「……」




 彼も、妖怪。

 いや、妖怪のクオーター。




「初めて聞いたよ…」




 半妖と人間の、子供。

 ―――私と似ている。

 雷神の母と、アイツとの間に生まれた……中途半端な存在。
 神でもなく、妖怪でもなく、人でもない。

 羨ましい。
 人間が、妖怪が、神が。




「―――……はぁ…」




 妬ましい。




「…………随分と御機嫌斜めのようじゃな、二代目」

「!」




 すぐ横から聞こえたハスキーボイス。
 ピクッと杯を持つ手が揺れたが、すぐ口元に笑みを浮かべて隣を見上げた。




「…いつ来たの?女郎蜘蛛」

「つい今し方。蜘蛛の妾にとって、音を立てずに忍び寄ることなど造作もない」




 にぃぃい、と口唇を三日月に吊り上げる女郎蜘蛛。黒く塗られた長い爪で自分の頬を撫でる彼女は、見た目三十代ぐらいの出で立ちをしている。
 意地悪く笑む女郎蜘蛛に苦笑を漏らすと、盆の上にあったもう一つの杯を手渡した。





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