雷神様と百鬼夜行!
□雷神様と女郎蜘蛛
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「何?」
「―――何故連中を潰さぬ?お前や妾等なら不可能ではなかろう」
「……………」
不満と苛立ちを宿した女郎蜘蛛の瞳をジッと見つめ、零はいつもの落ち着いた表情で告げた。
「―――まだ、殺すには早い」
「………」
「それに、弱くなった連中に追い撃ちをかける必要もないし」
弱者をいたぶるのは弱者の証だよ、と零。
眉を寄せて納得がいかない女郎蜘蛛はぐいっと酒を煽った。こうなった零は何を言っても聞かないので、やけ酒というのだろうか。
「お前には敵わん…」
「母様譲りだと思う?この性格」
「ああ!莱羅そっくりじゃ。見た目も中身も」
…しかも要らぬ処ばかり。
ボソッと女郎蜘蛛が呟いた言葉は零に聞こえなかった。
「これから奴良組とは浅からぬ関係になるやもしれんな」
「………? どういうこと?」
「――――いずれ、争うやもしれんということじゃ」
分かってないとは言わせないとばかりに零に鋭い視線を送る女郎蜘蛛。厳しい眼差しに、零も目を細めた。
雪女や川姫など、零に慕う妖怪が多いが―――女郎蜘蛛のような、零に厳しい者もいた。心配している彼女らは、それは零の為と甘んじて受け入れている(川姫は渋々)。
「連中も我等も妖怪―――頂点に登りたいと思うこともある」
「………」
「最悪の場合、争うことも免れようがないじゃろう」
「……分かってる。覚悟はしてる」
「嘘を申せ!まだ悩みまくっとるくせに」
「……………」
あー、と視線をさ迷わせた零に、女郎蜘蛛が溜息を漏らす。
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