狩り人
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「相変わらず―――意地汚ェ連中だな」
森の奥深くにある洞窟の中。
山賊が根城として使っていた洞窟の中に、一人の人影が唐突に現れた。
雨が降っているワケでもないのに開かれた番傘。黒い生地に桜が舞った着流しを纏ったその人物は、高くもなく低くもないよく通る声でそう言った。
一方、いきなり現れた侵入者に馬鹿にされた山賊達は、厳つい顔を歪めて刀や武器を手に持った。
「んだテメェは…!」
「此処が何処か、分かってんのか餓鬼ィ!」
「分かってるさ。分かってるから―――来たんだよ」
番傘の影から覗いた瞳が―――ギラリと鈍く光る。
瞬間。
「っ、ぐほ!!」
「!?」
視界から消えたと思ったら、後方にいた男が数人一気に倒れた。
反射的に振り返ると、番傘を片手でクルクル回して遊ばせ、鞘に収まったままの刀を持ってそこに立っていた子供。
「な………ッ!!?」
「…ふぅん。結構悪名高い山賊一派だから期待してたんだがなァ…期待外れか?外にいた連中と何ら変わりねェなオイ」
皮肉混じりに言いながら口角を上げた。
その言葉にカッとなった一人が抜き身の刀を持って叫ぶ。
「ッナメやがって!!ぶっ殺してやる!!」
「ま、待て!」
猪が如く突っ込んで来た男に溜息を零し―――刀で男の顎を殴り上げた。ゴッ!と痛々しい音がする。鞘に入ったままの刀は当然切れない。だが、男を気絶させるには調度良かった。
「猪突猛進だな。山にいるし、まさに猪、か?…………はっはは!いいじゃないか嫌いじゃないぞ!」
高らかに笑う。
そして番傘と鞘を空中に投げ出した。
番傘に隠れていたその顔が、漸く現れた。
「――――!!?」
すると、山賊の頭と思われる男の顔が強張った。
「……あ、赤が混じった黒髪に……右頬を覆う刺青………まさか、テメェ…」
途端に――“彼女”は目を細める。
楽しげに。
「通称『破軍』―――山賊狩りしてんだ。
存在を覚える必要はねェ―――どうせ、もうすぐ忘れるからな」
そう言って、刀を振るった。
【噂の山賊狩り】
(――なぁ、聞いたか?また山賊が1つ潰されたらしいな)
(山賊狩りだろ?俺ら農民からしちゃ、助かる話だぜ)
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