狩り人

□01
1ページ/2ページ






「相変わらず―――意地汚ェ連中だな」




 森の奥深くにある洞窟の中。


 山賊が根城として使っていた洞窟の中に、一人の人影が唐突に現れた。

 雨が降っているワケでもないのに開かれた番傘。黒い生地に桜が舞った着流しを纏ったその人物は、高くもなく低くもないよく通る声でそう言った。

 一方、いきなり現れた侵入者に馬鹿にされた山賊達は、厳つい顔を歪めて刀や武器を手に持った。




「んだテメェは…!」

「此処が何処か、分かってんのか餓鬼ィ!」

「分かってるさ。分かってるから―――来たんだよ」




 番傘の影から覗いた瞳が―――ギラリと鈍く光る。


 瞬間。




「っ、ぐほ!!」

「!?」




 視界から消えたと思ったら、後方にいた男が数人一気に倒れた。

 反射的に振り返ると、番傘を片手でクルクル回して遊ばせ、鞘に収まったままの刀を持ってそこに立っていた子供。




「な………ッ!!?」

「…ふぅん。結構悪名高い山賊一派だから期待してたんだがなァ…期待外れか?外にいた連中と何ら変わりねェなオイ」




 皮肉混じりに言いながら口角を上げた。

 その言葉にカッとなった一人が抜き身の刀を持って叫ぶ。




「ッナメやがって!!ぶっ殺してやる!!」

「ま、待て!」




 猪が如く突っ込んで来た男に溜息を零し―――刀で男の顎を殴り上げた。ゴッ!と痛々しい音がする。鞘に入ったままの刀は当然切れない。だが、男を気絶させるには調度良かった。




「猪突猛進だな。山にいるし、まさに猪、か?…………はっはは!いいじゃないか嫌いじゃないぞ!」




 高らかに笑う。
 そして番傘と鞘を空中に投げ出した。


 番傘に隠れていたその顔が、漸く現れた。




「――――!!?」




 すると、山賊の頭と思われる男の顔が強張った。




「……あ、赤が混じった黒髪に……右頬を覆う刺青………まさか、テメェ…」




 途端に――“彼女”は目を細める。

 楽しげに。





「通称『破軍』―――山賊狩りしてんだ。
存在を覚える必要はねェ―――どうせ、もうすぐ忘れるからな」




 そう言って、刀を振るった。






【噂の山賊狩り】



(――なぁ、聞いたか?また山賊が1つ潰されたらしいな)
(山賊狩りだろ?俺ら農民からしちゃ、助かる話だぜ)




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ