狩り人
□03
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「おい」
「あ゙ぁ?」
俺は、ある荒れ果てた村に来ていた。
山賊に襲われて家を壊され、殺され、何も残らない―――哀れな村に。
そして話し掛けたのは、山賊の一味と思わしき一人の男だった。まだ何か村に残っていないか確かめている辺り、コイツは下っ端。使いっぱだ。
「ンだテメェは…?」
「この村を襲ったのは、お前らだな?」
「っは!だったら何だってんだ?敵討ちか?」
にたりと気色悪い顔をする男に、思わず表情を顰める。―――気持ち悪い。こんな奴と話すだけで、吐き気がする。
俺が発する殺気にも気付かないこの鈍感な男は、俺に近付いて来た。そして品定めをするようにジロジロと見始めた。
「ほぉ…?兄ちゃん、綺麗な格好してんじゃねえか。売ったら相当高値がつくなァ」
「…………」
「殺されたくなきゃ、身ぐるみ置いて―――!」
それ以上、言葉が発せられることはなかった。
みるみる内に男の顔が強張り歪み、脂汗が吹き出し―――――絶叫する。
「ひ……っぎゃあああぁぁぁ!!?」
男が押さえたのは、手首。
俺に握られているのは―――短刀。つまり、俺が、奴の片手を切り落としたんだ。
愛刀を使う気にもならない。
こんな奴に、使いたくない。
「お、俺のっ、手がぁぁ…!!」
「………………」
喚くそいつの声が疎ましい。
混乱している男の足を薙ぎ払い転がせば、呆気なく仰向けに倒れた。短刀を横っ面ギリギリに突き立てれば「ひぃ!?」と情けない声が上がる。
今の俺の目は―――ひどく、冷めているだろう。
「お前らの拠点の場所を吐け」
「な、なぁ……ッ」
「さっさと言わないと、お前の身体ズタズタに引き裂くぞ」
短刀を引き抜き、男の首に添えれば「わ、分かった!言うから、殺さないでくれ!」と叫ぶように言った。
所詮、山賊の間柄。
仲間意識なんざ、ありゃしねえ。
「こ、こっから先、歩いた林の中にある洞窟だ!木々に隠れて分かりにくいが、それは確かだ……!」
「…………」
「うっ嘘じゃねえ!信じてくれよ!!」
「…………信じてやってもいいぜ」
「! じゃあ、」
「お前は殺すがな」
「―――」
さっ―と青褪める男。
短刀を垂直に男の喉元に構える。
「たっ、頼む……殺さないでくれ……!」
「………お前は、」
くっ、と力を込めれば皮膚に食い込む刃。
「お前は―――そう言った農民を、殺したのに。お前は、死にたくない?
んな都合のいい話があるかよ。
テメェは死ね。そして後悔しろ」
次の言葉を発せさせる隙もやらず、短刀をそのまま押し込んだ。
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