狩り人
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武田信玄が建てた『武田道場』。
広い闘技場の四方で大きな松明燃え上がり、中を照らす。
その中央で向かい合う――零と幸村。
互いの武器を向け、各々の構えをとる。
信玄や佐助が端でその様子を見守っていた。悠然と腕を組み、その傍らには采配斧が突き刺さっている。
「幸村、零。準備はよいか?」
「無論!いつでも構いませぬ!」
「こっちもだ。好きに始めてくれ、信玄公」
「うむ」
槍の切っ先を零に向けた幸村。
長刀を下段に構えた零。
互いのみ視界に入れる。
深く頷いた信玄は、采配斧を掴むと、それを高く持ち上げ、
「いざ、尋常に―――」
そして――振り下ろした。
「始めィ!!!」
先に動いたのは幸村だった。
高く飛び上がり、一瞬で零の間合いへと入った。
「おおおおおお!!」
「甘いッ」
「ぬっ!」
咆哮と共に槍を振り下ろす。
零はそれを刀で防ぎ、弾き返すと幸村目掛けて突きを入れる。だが幸村もそれを身を捻って避け、技を繰り出す。
「烈火ァァ!!」
「!」
無数の素早い突き。
零は全て躱すことは無理か、と幾つか“いなし”―――姿を消した。
「ッ何!?」
―――否。姿を消したのではなく、幸村に“消えたように見えた”だけだ。
零は、幸村の足元に深く深く膝を折り抜刀の構えをしていた。下から己を見上げている零に、幸村はギョッとする。
右顔を覆う刺青が―――にやりと笑うのと共に歪む。
「壱ノ型・闇撫(やみなで)」
鞘から刀を――下から上へ振り抜いた。
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