狩り人
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―――どれ程時間が経ったか。
短く感じたようで、長かった。もう太陽が沈みかけ、空を橙色に染めた。一番星が暗くなり始めた空で光る。
「山賊狩り、な。どうりで強いわけだ」
「………含みのある言い方だな」
喧嘩という名の戦いを終えた二人。零は自分で『柄にもない…』と思いながら、座り込んで夕日を眺めていた。慶次が隣で寝転んでいる。
二人共服が所々斬れ、零は無意識に斬れた部位を手で押さえた。
「俺さ、山賊狩りの噂を聞いたんだ」
「噂?」
「滅茶苦茶強い『破軍』って奴が、山賊を潰して日ノ本を回ってるってな」
「…間違いじゃねェな」
「よく考えればそうだよなー。零ってスッゲエ目立つ刺青してんもんなぁ、すぐ噂になるぜ?」
「好都合だ」
からかうような慶次の言葉に、零はハッと鼻で笑い飛ばした。
「ただ噂は好きじゃねェな。すぐ尾鰭が付きやがる」
「まあ確かに。俺、想像してたのと全然違うぜ」
「……」
「スッゲエ身体のデカイ熊みたいな奴だと思ってたんだ!」
「………お前の想像はアテにならねェな」
溜息をついた零は、立ち上がって袋に包んだ愛刀を肩に担ぎ、紅い夕日を見たまま小さく呟いた。
「――――そろそろ、狩りの刻だ」
ボソリと小さく呟かれた言葉は、慶次は聞こえなかったらしく、首を傾げていた。
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