狩り人
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四国・中国へ向かう途中。
零は大臥に跨がり、数日走って行くと―――海が見えた。
「……お」
手綱を引き、大臥を止める。
大臥の鬣(たてがみ)を撫でながら、零は海を見ながら、珍しく穏やかな微笑を浮かべた。
「やっぱァ、いいもんだな…」
零は海が好きだった。
キラキラと海面が光を反射していて、ザザァ…という波の心地好い音が耳に届く。潮の香りを含んだ風が零の、刺青が入った頬を撫でた。
「大臥は海を見るのは初めてか?」
大臥に話し掛けると、まるで答えるようにブルルッと鼻を鳴らした。零はくつりと笑い、「そうかそうか」と大臥を撫でる。
「…いい天気だ」
――普段からは考えられないほど機嫌が良い。
大臥を歩かせ、砂浜を闊歩する。大臥は蹄にあたる砂浜の砂の感覚に慣れないのか、たまにザッザッと砂を蹴り上げた。
「四国……西海の鬼か…」
四国は長曾我部が納める土地。
宝を求め、海を渡り歩くという、今の乱世では珍しい海賊。
「……海賊、な。…俺が狙う獲物とは正反対だ…」
もし。
もし連中も、山賊と同じようなら――……
「………、!」
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