狩り人
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刀を振るえば、血飛沫が飛ぶ。
それが普通で、日常で、常識になっていた。
「――ッチ」
四国は日ノ本全体から見ると小さいが、やはり山もそれなりにある。山賊も、やはりいる。長曾我部がいるからたいしていないが。
治安がいい――というのもあるが、屈強な男共は長曾我部の下につくことが多い。だから、海賊になる奴が多い。………俺の邪魔をするなら斬るだけだがな。
「此処いらの山賊はもう潰したか…」
和紙で刀についた血を拭い、顔についた返り血もついでに拭く。
近くに小川があったから、そこで手も洗う。
水面を覗き込めば、目が据わった自分が映る。
「……はっ、滑稽だな…」
自嘲気味に笑うと、顔面の刺青が歪む。
濡れた指で刺青をなぞると、もう慣れた感触が指の腹に伝わる。
「いつになったら、俺は解放されんのかな」
誰に言うでもなく、小さく呟く。
――駄目だな、こんなことを言ったら、元も子もない。俺は少しでも多くの山賊を殺して死ぬ。それでいい。それだけで、いいんだ。
「……小十郎…」
思い浮かぶのは、幼少の頃の記憶。
「――政宗…」
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