雷神様と百鬼夜行!
□雷神様と日常
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――朝日の光が、一室に差し込む。
物があまり置かれていない和室には、机や鞄、箪笥や小物など。見慣れないのは―――鞘に収まった日本刀ぐらいだろう。
その部屋の中心には布団。
規則正しく上下する布団には、一人の少女が眠っている。顔は布団に隠れて見えない。
すると、静かに部屋の障子が開かれる。
青と白を基調とした着物を着た美しい女性は、くすりと真っ赤な唇に弧を描かせて笑うと、ゆっくり布団まで近付き、少女の肩を揺すった。
「零…起きなさいな」
「……………っん…」
「ほれ、もう朝だ」
もぞりと動くが、起きる気配のない少女に女は肩を竦める。そしてその顔を少女の耳元まで近付け――……
「ふっ」
「ッ!?」
少女の耳に息を吹き掛けた。
しかも、その吐息は人間の生暖かいものでなく―――冷たい、氷のような鋭い吐息だった。
少女はガバッと勢いよく身体を起こし、クスクス笑っている女の方を見ると不機嫌そうに眉を寄せて口を開いた。
「雪路(ユキジ)…」
「うふふふふ。おはよう、零」
少女の名前は鳴神零。
女は妖怪――『雪女』の雪路。
彼女達は、家族で上司と部下の関係にある。
「はぁ……今日は雪路が起こしに来てくれたんだね…」
「あら?不満だった?」
「寒いよ。朝っぱらから耳が凍るかと思った」
頬に当たる髪を後ろに流す仕草をする零はやけに大人びた雰囲気で、憂い顔がよく似合う。
一方、悪戯が成功した雪路は真っ白な髪をさらりと垂らせながら首を少し傾げた。
「おや。寝起きの悪い零には調度良い目覚ましじゃないの。
ほら、髪を梳かしましょ」
「ん」
櫛を片手に持つ雪路に背を向けた零。
零の艶やかな黒髪を一束持ち、根本から櫛を通していく。
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