雷神様と百鬼夜行!
□雷神様と旧校舎@
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「は?学校の旧校舎?」
「そう」
いつも通り、朝食をとっていた時に雪女がシャーベットになったお茶をシャリシャリ食べながら言っていた。
心当たりがない零はうーん…と悩み、やはり出てこなかったのか頭を横に降った。
「いや、知らない」
「あら、本当?でも人間の子供の間では随分噂になってるみたいよ。妖怪が出るー、ですって」
「ふうん…」
「ってか何で人間に馴染んでるアンタが知らないのォ…」
背後からスッと現れ、はぁ、と呆れた溜息を吐いてデザートのアイスを零に差し出した雪女郎。零は礼を言いながらそれを受け取り、苦笑いした。
「ありがと。でも知らないんだもん」
「興味がない、の間違いじゃないの?」
「まあね」
「……まあどうして雪女の方が詳しいのかも謎なのよねぇ……」
「あら、うふふ」
雪女郎はジト目で雪女を見るが、本人は袖で口元を隠しながら笑うだけ。誤魔化している。
「噂話が好きよねえ、ホント」
「いいじゃない。零の周辺にはびこる邪魔な妖怪の情報は―――無くて損はないわよ?………いつでも消せるわ」
クスッ…―と。
雪女が冷たい微笑みを零したことにより、部屋にブリザードが巻き起こった。
「……(相変わらず過保護ねえ)」
「…冷たい…」
零は頭についた霜や氷を払うと、鞄を持って立ち上がった。
「もう行くのぉ?」
「うん。早めに行っとく」
「気を付けてね」
「ん。行ってきまーす」
パタパタ…と小走りに去って行った零に手を振った雪女に、雪女郎は腕組みをして、座っている雪女を見下ろした。
「どうするの?その旧校舎っての――ホンモノでしょ?」
「…私達が手を下す程でもないわ。雑魚よ」
振っていた手を下ろした雪女は、裾を正しながら立ち上がり、白い肌に映える紅い唇を歪めた。
―――ゾッとする程美しく、恐怖する微笑。
「もし私達の二代目に手を出したその時は………跡形も残らないわ。生まれたことを後悔させてやる」
「…………」
「それにこの辺りは確か、奴良組の管轄でしょう?彼らに任せるわ。“あの男”を見た限り――そこまで腑抜けた連中じゃあなさそうだったしね」
「先に戻るわ」と、スッと雪女郎の横を通り過ぎるとそのまま部屋を出た雪女。
残った雪女郎は、肩を竦めて顔にかかった前髪を指で払う。
「……やっぱり、雪路が一番厄介よね…この組で」
先代の―――莱羅の娘。
私達の―――総大将。
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