逆説2

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「…おい」

「はい?」




 御影深月がイタリアに来て数週間。
 己の後ろをちょこちょことついて来ていた深月を振り返り、煉獄はその端正な顔の眉間にシワを寄せた。深月は小さく首を傾げた。



「どうしてそうオレについて来る」

「どうしてって…こっちに来てからというもの、ウチは煉獄さんしか頼られへんのですわ。堪忍したって下さい」

「…お前の友人に頼め」

「ジョットさんとラブラブやから」

「………………」




 閉口した煉獄は、深月を見下ろすと溜息をついた。




「オレを怖がらん女はお前ぐらいだ…」

「? 怖がる?なして?」

「――オレが闇だからだ」




 そう言い、闇のリングを嵌めた右手を彼女の眼前に晒す。黒い宝石がついたそれを見た深月は、やはり首を傾げた。




「指輪と煉獄さんと…なんや関係がありはるんですか?」

「ああ」

「…せやったら、やっぱり怖くないですわ」

「………何?」




 器用に片眉を上げ訝しむ煉獄。
 深月はただ、柔らかく微笑んだ。




「煉獄さんは、煉獄さん。ウチに優しゅうしてくれた人や。なぁんも怖がることあらへん」

「……………」

「例え闇がどーとか、殺しがあーだこーだあっても………やっぱり煉獄さんは優しい人や。さりげなく気遣かってくれはる―――エェ人やね」

「…………ふん。勝手にしろ」




 ふいっと踵を返した煉獄。
 彼の頬が少し赤かったことに―――深月は嬉しそうに微笑した。




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