逆説2
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「ジョット、いるか?」
「? 煉獄…どうした」
バンッと勢いよく扉を開けて入ってきた煉獄に、ジョットは書類から目を離した。珍しく冷静さを欠いた煉獄にジョットは首を傾げた。
革靴を踏み鳴らしてジョットのデスクまで歩み寄ってきた煉獄は、眉を寄せて話し出した。
「深月のことなんだが……」
「彼女がどうした」
「――…アイツのこと、何か知らないか?」
「………?」
曖昧な言い方に、ジョットは眉を寄せた。
「どういうことだ…?」
「…深月にスペードの幻術が効かなかった」
「!?」
流石にジョットも、目を見開いた。
そして立ち上がり、煉獄の隣に立った。
「何故だ……奴の幻術は超一級。一般市民である彼女がそれを退けるなんて」
「だからオレも驚いている。…深月には、何かある。深月自身も分かっていなかったから、奥に眠る潜在能力があるのかもしれない」
「………そうか。分かった、オレも調べてみよう」
「ああ」
そして一瞬、沈黙が流れる。
煉獄が溜息をつき、濡羽のような髪を掻き上げた。
「…疑っているわけじゃない。だが、知っておきたい。彼女のことをスペードが放っておくわけがない」
「分かっているさ。お前の彼女に対する溺愛っぷりは、見ていて口から砂糖が出そうなほどだからな」
「ジョット、貴様人のことを言えた立場か…?」
ジョットの爽やかな微笑みに、煉獄の目付きが鋭くなった。揶揄われることに慣れていない煉獄は羞恥で目元がほんのり赤い。
ジョットは小さく微笑み、彼の肩を軽く叩いた。
「安心しろ。彼女に何かしら力があったとしても――お前が守るんだろう?」
「………当たり前だ」
愛しい家族。
必ず――守ってみせる。
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