逆説2
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暗い寝室の中に煉獄は入った。
広い寝室にあるキングサイズのベッドに深月と戒が眠っている。
煉獄は音もなく近寄るとベッドに腰掛け、幸せそうな寝顔を眺めて小さく笑った。普段の彼からは考えられないような穏やか微笑みは、きっと彼の仲間が見たらギョッとするだろう。
「………ん、………煉獄さん…?」
「……悪い、起こしたか?」
煉獄と結婚してから深月は人の気配に敏感になった。煉獄がいることに気付き、眠そうに目を擦って「いいえー」と返事をする。
寝起きの上擦った声に、また煉獄は微笑した。
「お帰りなさい」
「ああ、ただいま。……悪いな、戒の面倒を任せっきりで」
「構いませんよ。煉獄さんが忙しいのは知ってますし……休みが取れたら存分に戒に構ってくれとりますから」
にへ、と眠たそうに笑う深月。
煉獄は深月の頬を撫でると、黒髪に指を絡ませる。
「もう寝ておけ。オレも、もう寝るから」
「はい。おやすみなさい、煉獄さん…」
よっぽと眠かったのか、深月はお休み三秒で寝てしまった。
起こしてしまったのに若干の罪悪感を感じた煉獄だったが、愛妻と息子の寝顔を見ると自分も眠くなってきた。
コートとブーツを脱ぎ、シャツのボタンを三つ程外し、ベルトも取ると戒を間に横になる。
二人を抱きしめて、煉獄はゆっくり眼を閉じた。
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