逆説2

□50
1ページ/6ページ





 暗い寝室の中に煉獄は入った。
 広い寝室にあるキングサイズのベッドに深月と戒が眠っている。
 煉獄は音もなく近寄るとベッドに腰掛け、幸せそうな寝顔を眺めて小さく笑った。普段の彼からは考えられないような穏やか微笑みは、きっと彼の仲間が見たらギョッとするだろう。




「………ん、………煉獄さん…?」

「……悪い、起こしたか?」




 煉獄と結婚してから深月は人の気配に敏感になった。煉獄がいることに気付き、眠そうに目を擦って「いいえー」と返事をする。
 寝起きの上擦った声に、また煉獄は微笑した。




「お帰りなさい」

「ああ、ただいま。……悪いな、戒の面倒を任せっきりで」

「構いませんよ。煉獄さんが忙しいのは知ってますし……休みが取れたら存分に戒に構ってくれとりますから」




 にへ、と眠たそうに笑う深月。
 煉獄は深月の頬を撫でると、黒髪に指を絡ませる。




「もう寝ておけ。オレも、もう寝るから」

「はい。おやすみなさい、煉獄さん…」




 よっぽと眠かったのか、深月はお休み三秒で寝てしまった。
 起こしてしまったのに若干の罪悪感を感じた煉獄だったが、愛妻と息子の寝顔を見ると自分も眠くなってきた。
 コートとブーツを脱ぎ、シャツのボタンを三つ程外し、ベルトも取ると戒を間に横になる。
 二人を抱きしめて、煉獄はゆっくり眼を閉じた。




.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ