逆説2
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「なぁ、零。家族が好きか?」
兄ちゃんの言葉に、自分は同然だと大きく頷いた。
すると兄ちゃんは苦笑いした。
「オレも好きだよ。だけどな、この先どうなるか分かんねぇんだ」
あの時はよく分からなくて、ただ首を捻っていた。
兄ちゃんは言った。
「この世に不平なんてものはない。変わらないことなんて有り得ない。―――人の気持ちだってそうだ」
兄ちゃんはパッと自分の手を掴んだ。じんわりと温かみが広がり、その体温が心地好かった。
「あったかいだろ?この温もりも、いつかは消えるんだ」
そう聞いて、自分は悲しくなって泣き出した。
ボロボロ流れる涙を、兄ちゃんは困ったように笑いながら拭ってくれた。
「零は泣き虫だな。あんまり泣くと、目が腫れるよ?」
頭を撫でてくれる手が好きだった。
慰めてくれる声が好きだった。
優しい笑顔が大好きだった。
だけど
「―――お前も嫌いなんだよ、零」
手は血で染まり、
声は冷たく鋭く、
笑顔は消えた。
大好きだったのに。
信じてたのに。
変わらないと思ってたのに。
――不変なんて、ありやしない。
あるのは、
常に変化するモノだけ。
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