逆説

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「分かりませんね……」

「……何がだ?」




 薄暗い廊下の壁に凭れ掛かった男が煉獄に言い聞かせるように呟いた。それを聞いた煉獄は、歩みを止めてその男を睨んだ。
 その男――D・スペードはその視線を受け嘲笑いを一笑する。




「貴方ほどの方が何故マフィアなどに成り下がったのでしょうね」

「……………」

「それは、あの男に絆(ほだ)されたのか――――闇に魅入られたからか………それとも、両方か」

「……相変わらず、一言目二言目にはジョットの否定か。暇人め」

「おや。これでも暇ではありませんよ」




 スペードは組んでいた腕を解くと、ブーツの踵をコツコツ鳴らしながら煉獄の正面に立ちはだかった。
 煉獄の瞳に浮かぶ苛立ちに、スペードは嗤う。




「見ていてとても腹立たしい。見ていてとても苛立たしい。見ていてとても―――不愉快だ」

「………」

「君達のその信頼…壊れたらどうなるでしょうね」

「………貴様、オレをそんなに怒らせたいか?」




 ガッ!とスペードの胸倉を掴み、顔を近付ける。息苦しさに顔を顰めたスペードだが、不遜な笑みが絶えることはない。




「貴方を怒らせると、とても面倒ですからね………本気でキレさせたりはしませんよ」

「………」

「ただ、憶えておいて下さい。……僕はボンゴレが嫌いだ。勿論、それに加担する貴方も」

「奇遇だな。オレもお前が嫌いだ」




 乱暴にスペードを離すと、煉獄は彼を押し退け歩き出した。




「憶えておいて下さい―――いつか、必ず、僕は報復をします」




 耳に残る、低く甘い声色が、嫌に記憶された。




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