逆説

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「………ジョット、そいつは?」




 ジョットに手を引かれている女に、煉獄は眉を寄せた。自警団――マフィアを創立してから、ジョットは女によくモテた。いや、元から顔が良いため、それまでもよく女が言い寄って来ていたが、彼女のようなタイプは初めて見た。
 艶やかな黒髪を一つの髪飾りで結い上げ、イタリアでは滅多に見ないジャッポーネの民族衣装――着物だったか――を纏っている。
 ジョットが日本好きなのは知っていたが、まさか日本人の女を連れて来るとは思わなかった。故に怪訝そうに寄せられた眉に、ジョットは薄く笑った。




「彼女はオレの婚約者だ」

「………何?」




 ひくっ、と煉獄の頬が引き攣った。
 女はその様子を見ていて苦笑いをした。




「家康…あ、いえ、ジョット……話してなかったのですね…」

「ああ。早く君をこっちに招きたかったからな」

「………はあ。オレは何も言わんが…他の連中が五月蝿いぞ。特にGは」

「決心を歪めるつもりはない。それともうじき彼女の友人も来る」

「………此処は観光地か…」




 最早冷めた目をしている煉獄に対してジョットはどこ吹く風。婚約者の彼女が一番ハラハラしている。




「それで、その友人の案内を煉獄に頼みたい」

「……………あ゙?」

「ジャッポーネに飛んで欲しい」

「おまっ…………ああ、くそ!分かった。その代わり、しばらく休暇を寄越せよ」

「…善処しよう」




 煮え切らない返事に益々煉獄の顔が怒りに歪む。
 まるで般若のような顔をなさっていらっしゃる……!と婚約者の彼女が怯えているのを尻目に、煉獄は踵を返した。




「それで、その女の特徴や名前は?」

「これに書いてある。頼んだぞ」




 ジョットから一枚の紙を渡され、煉獄はその場から去った。





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