黒き憂鬱

□第一章 壱話
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初日



転校初日。煩わしい。面倒くさい。
そう云った表情で扉の前に立つ少年がいた。
教室の中に感じる、浮き足立った気配。


「だるい。」


ぽつり、と呟いた彼の一言。それとほぼ同時に教師の声。


「おい、風無入っていいぞ」


偉そうな口調に少し苛立ちながらも口許に笑みを浮かべながら扉に手を掛ける。


「失礼します」


教室に入ると言わずもがな、視線を注ぐクラスの人間は、全てが彼の美貌に見惚れる。
一拍置いて、女子の黄色い悲鳴。
男子からも何故か雄叫び。

更に彼が苛立つ。


「じゃあ、風無、自己紹介してくれ」

「はい。」


何と言おうか。


「・・・イタリアから来ました。風無夜玖です。あと、男だから。以上」


クラス中の男子が落胆したのは言うまでも無い。
彼の予想は的中していたようだ。


「風無の席は・・・沢田の横な。窓ぎわの一番後ろだ」


沢田ー手ェ上げろー、と言う声を耳にしながら、夜玖は席へ向かう。
沢田、沢田、どこかで聞いたような・・・。ああ、ボンゴレ十代目か。


「あのっ、風無くんっ、よ、よろしく・・・」


・・・どうやらもう席のところまで行っていたようだ。


「えっと、沢田?くん、こちらこそよろしく
お願いします」


席につきながら答える。


「じゃあ、これでHRを終わる。後は風無への質問タイムでいいぞ」


そう言った途端、生徒たちは夜玖の席に集まる。
彼はほとんどの事に「秘密です」とか「答えられません」としか答えなかったが。
しかしクラスメート達は、天使の如き笑顔にごまかされ、幸せそうに笑っていた。
・・・内心、彼が悪態をついているのも露知らず。

あぁ、五月煩い。

弁当忘れたし、早く帰りたい。
彼の頭の中を占めるのは、今のところそれだけだった。



(書き手:管理人A)


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