黒き憂鬱

□第一章 四話
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小さくて大きい変化



1日の授業が終わり、海音と並んで廊下を歩いていた雪音の目に止まったのは、偶然すれ違った平和野 紫筑の首元だった。


きらり、と紫筑の首に光る完全な形をした何か光をイメージさせる模様がデザインされた黒い指輪。



ついこの間見たときには不完全だったそれが完全になったということはつまり、紫筑が一般人から逸脱した存在になったことを表す。
嗚呼これは、


「面倒なことになりましたね。」
「…姉貴?」


その美貌を少し歪めた雪音の呟きに、海音が怪訝そうな顔で反応する。


「いえ、大したことではないんですが。少々確かめたい事ができたので、これから少し別行動しても構いませんか?」

「別に構わねえけど。その姉貴が確かめたい事って何なんだ?」

「ふふ、それは言わずともすぐに分かると思いますよ。」


大丈夫だとは思いますが一応警戒はしておいて下さいね、と雪音が意味有り気に笑った。



±



放課後、海音は雪音の言ったとおり別行動をしていた。

別行動と言っても海音は別段する事がある訳ではないので、ただ帰路についただけだったが。

帰ろうと1人で廊下を歩いていると、後ろから数人がついて来る気配がする。

ここは学校なので行きたい方向が同じだけなのだろう、と気を緩めようとしたが、雪音の言葉を思い出して気を引き締め直した。


…後ろをついて来る人数が徐々に増えている。

粗方どのクラスも終礼が終わり本来ならば人影も疎らになる時間帯。

だのに自分の後ろの気配はもう不自然な程増えている。


可笑しい、声でも掛けるべきか、そう迷っているうちに、先に後ろから声を掛けられた。


「おい、白羽矢海音。ちょっと俺たちについて来て貰おうか。」


雪音が言っていたのはこれか、と思いながら海音は足を止め、そして後ろを振り返った。


「…何の用だ。」


そう答えながら自分がこうなっているのならきっと雪音も同じ状況の筈だ、と逡巡する。


「何でも良いだろ。兎に角俺たちと屋上に来て貰おうか。」

「…嫌だと言ったら?」
「力ずくで連れて行くまでだ!」


にやり、とまるで自分達が勝てると過信している男達を一瞥し、海音は―――
、、、、、、、
何もしなかった。


“お前たちは雑魚だからどこからかかってきても構わない”と言わんばかりの―実際相手にすらならないが―余裕綽々の彼に男達は顔を怒りに染めた。


「ざけんなこの野郎っ!嘗めんじゃねえ!!」


リーダー格の男がそう叫んだのを皮切りに一斉に飛びかかってきた男達。


海音は、最小限の動きでそれを潰しながら、こいつらは誰の差し金でこんな無謀な勝負を仕掛けてきたのだろう、雪音は大丈夫だろうか、と頭の隅で思った。


まだ見ぬ主犯と先制攻撃
(そして片手間な撃滅)




(書き手:管理人A)



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