03/10の日記
23:23
D.Grayーman*ティキ
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「私、貴方の事が大嫌いです」
何の前触れも無く同じ机を囲む男にそう告げる。
男は一瞬驚いたように目をぱちくりさせた後、心底不可解そうに私を見た。
「藪から棒に何なのかねお前は……」
呆れたように溜め息を吐きながらそう呟いた彼は、私に合わせていたその視線を外した。
嗚呼、酷く人間くさい仕草だ。人間でありながら神に背く私達に、そんな人間臭さなど要らないというのに。
いや、けれどある面だけを見るならば、神の使徒と呼ばれるエクソシストよりもノアの一族というものはよっぽど人間らしいのかもしれない。
ロードの子供らしい無邪気さや、ジャスデビの子供っぽいところ、ティキのこういったちょっとした仕草など。
嗚呼けれど、私には何もそんなものはないというのに。私は、ノアの一族というそのたった一括りの中でさえ、ハズレモノになってしまうのか。
「おーいちょっと?聞いてるかー」
反応の無くなった私の目の前でひらひらと手を振る彼のせの手のひらに自分のものを重ね合わせる。
優しくてあたたかくて、それはどうしたって、人間のものだった。
「お?」
「ティキ・ミック卿。貴方が、嫌いだ」
不思議そうに、そして、再度驚いたように声を発した彼のそれに被せるようにまた先程と同じ言葉を投げつける。
「あーそうですか。まあ家族だから好きとは限らないしいいんじゃねぇの?」
つっても、お前は行動と言動が一致してねぇけどな。
何が面白いというのか、ティキは口角を歪めて言った。いや、掴めない男だ、恐らく本当に笑っているわけではないのだろう。
ギリ
嫌な音を立てて、奥歯を噛む。
「貴方が、」
無である筈の、無でなければならない筈の、そんな私を掻き乱し無でなくすこの男が、私は嫌いなのだ。
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ロードの話と全く同じ子です。“無”を司るノアの一族。
愛よりも深い主人公の嫌悪。誰よりも特別。
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