※三治郎が少し毒舌です





「あ、それ違うよ」

そう指摘しただけなのに、一平は顔をしかめて「うるさい」と言った。一平は顔に似合わず怒りっぽい。怒りっぽいというかプライドが高いんだ。この顔でプライド高いとか笑っちゃう。

「ね、餌やり終わったら遊ぼーよ」
「ヤだ。ボクは課題で忙しいの」
「課題なんて後でいーじゃん」
「これだから一年は組はヤなんだよ」

餌を取り出しながら、一平は呆れたように溜め息をつく。まただ。一平は何かとは組を馬鹿にする。そもそも一平っていう奴は顔通りほのぼのした奴で、滅多に怒らないし文句も言わない。一平が怒ったり文句言ったり溜め息つく時は大抵僕と話してる時だ。

「そんなこと言わないでさ。かけっこしよーよ」
「ぜったいイヤ。三治郎とかけっこしたって勝てないし」

プライドが高いうえに負けず嫌い。一平ってホント面倒くさい。こんな面倒くさいのにつきあう奴なんて僕ぐらいだと思う。一年い組の連中以外でだけど。

「じゃあ鬼ごっこは?」
「三治郎足はやいだろ」
「じゃあ、たかおに!」
「三治郎足はやいだろ!」
「我がままだなあ」
「どっちが」

頬を膨らませる一平。「おもしろい顔ー」と笑って言うと、一平は「三治郎!」と眉をつり上げてきた。一平をからかうのは面白い。普段怒らない一平が、僕にだけ怒るんだ。

「じゃあ一平は何がしたいの」
「宿題がしたい」
「それ以外」
「……走らないやつ」
「えー、おもしろくなーい」
「もういい。三治郎とは遊ばない」
「あーうそうそ!走らないやつね。よし、ボールで遊ぼう」
「……ボール?」
「うん、ボールで何する?一平がやりたいのでいいよ」
「じゃあ蹴りあいっこしよ」
「いいよ」

よしよし乗り気になってきた。文句言いつつも、いつも僕と遊んでくれる。僕が相手だと頑張って突っ張ってるけど、基本的に素直な奴なんだ。無理して突っ張っちゃって面白いなあ。

「三治郎、ぼけっとしてないで手動かす」
「わかってるよー、ちゃんとやってるじゃん」
「はやく終わらせないと遊ぶ時間減っちゃうよ」

さっきと言ってることが違うよ一平。おかしくって、くふふと笑うと睨まれた。おーこわ。

全部の生物に餌をやり終え、仕事終了。障子を開けてみれば空は快晴、真っ青だ。

「一平、はやく行こ」

餌を棚に閉まう一平を後ろに、早々と部屋から飛び出した。

「待ってよ三治郎」

そう言って部屋から駆け出す一平。待てるわけない。ここからは委員会でも補習でもお使いでもない、遊びの時間だ。一分一秒もったいない!

「このまま用具倉庫まで競争ー」
「かけっこはヤだって言ったじゃないか!」
「そんなの知らなーい」
「もー!」


20100822




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