夏休みの終わりは夏の終わりを示していると俺は思う。だからこそ、この日になると毎年俺は思うのだ。ああ、やっと夏が終わると。
父さんや母さんと過ごすのは嬉しいし安心感もある。俺はまだ十二だし、やっぱり親元の良さは心地好い。でも、ここには作がいないんだ。俺を呼ぶ声、どこからともなく現れるその姿。現れた時は何故かいつも怒ってるけど、俺にはそれさえ心地好い。

なあ、作兵衛。夏が終わるよ。もうすぐ会えるね。


「いってきまーす………え、母さん何言ってんの。こっちの道だろ。違う?またまた」













毎年この日は嬉しくて仕方がない。夏休みが終わるということは学園が始まるということであり、要するに作兵衛や三之助に会えるのだ。僕はそれが楽しみで楽しみで仕方ない。
勿論、父上母上と過ごす時間は格別であり、実習や委員会で疲れた体をゆっくり休ますこともできた。母上の作ったごはんは食堂のおばちゃんに負けず劣らず美味しいし、僕は夏休みが大好きだ。
でも、ここには彼らがいない。あの、いつも怒ってばかりの作兵衛と無自覚な三之助が。作兵衛と三之助がいない日々はつまらない。夏休みは、それをしみじみ感じることが出来る期間だった。そんな日々も今日で終わりだ。だって今日は夏の終わり。


作兵衛、三之助。もうすぐ会えるぞ。またたくさん遊んでくれ!



「では!父上母上いってまいります!学園への道は……こっちだあああ!」













夏休みの終わりが近づくと、いつも思うことがある。
一つは、夏休みが終わる、悲しいなあ、だ。やっぱり家族と長期間共に過ごせる夏休みは嬉しい。何よりあの迷子二人に振り回されない日々というのが穏やかで穏やかで。この夏休み中は平穏を噛み締める日々だった。
それに反して、あいつらと一緒にいない日々はこんなにも物足りないものなのかと感じるのも、この夏休みだったりする。二人を探してないと調子が狂う。寂しいんだ、率直に言うと。
明日からは捜索の毎日だろう。気苦労が絶えない日々に戻ってしまう。でも、とても賑やかな毎日の始まりだ。


さあ、夏が終わるぞ。お前ら、明日からまたよろしくな!



「あ、作だ」
「作兵衛、遅いぞ!」
「三之助、左門、久しぶり!」
「聞いてよ。道中なぜか母さんがついてきてさあ」
「三之助もか!僕も母上と一緒に来たんだ!」
「俺もう三年なのにさあ、参っちゃうよ」
「僕はありがたいけどなあ」
「……お前らの親御さんには本当に同情するよ」

20100831




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