※現パロで高校生。四郎兵衛が誰これ状態







特有の白く細い髪をふわふわ揺らし、調子外れの歌を口ずさみながらアイツは今日もおれの席にやって来る。

「きょーうのおひるはメロンパーン」
「何その歌」
「え、知らないの?メロンパンの歌だよ」
「知らねー。誰の歌?」
「僕の歌」
「なんだそれ」

「ジョークだよー」と頬を膨らませる四郎兵衛に、はいはいと適当に相槌をうって鞄から弁当を出す。ちなみに今日のおかずはハンバーグ、影の主役は玉子焼き。

「あ、いいなー。玉子焼きだあ」
「しろにはメロンパンがあるだろ」
「でもでも、いいなー」

うっとりと玉子焼きを見つめる四郎兵衛。じりじりじりじりと玉子焼きに絡みつく視線。

「あーもー、わかったよ!」
「わーい、三郎次大好きー」

くそ、玉子焼き一個しかないのに。しぶしぶ箸で玉子焼きを掴み、四郎兵衛の口へ近づける。

「はい、しろ」
「わーい」

ぱくんと効果音が聞こえてきそうな勢いで玉子焼きを丸ごと口に入れる四郎兵衛。

「おいしー。三郎次のお母さん、玉子焼き上手だね」
「別に。鬼ババの作った玉子焼きなんか美味くねーよ」
「とか言って。名残惜しそうに玉子焼き見つめてた癖に」
「っ、うっせ。しろはさっさとメロンパン食えよ」
「言われなくても食べますー」

にこにこ笑う四郎兵衛。四郎兵衛はよく笑う。笑うといっても声をあげて笑うのではない。やわらかい笑みを浮かべるんだ。

「ね、メロンパン一口いる?」
「いらない」
「えー、なんで?」
「楽しみにしてたんだろ。しろが全部食えよ」

箸でハンバーグを割りながら(これがなかなか切りづらい)そう言うと、四郎兵衛はえへへと気味悪い声を出してきた。

「三郎次はやさしーよね」
「は!?」
「三郎次のそーいうとこ大好きだよ」
「な、何言ってんだよ」
「さっきだって一個しかない玉子焼き僕にくれたし」
「それはおれが、」

おれが、お前のおねだりに弱いから。別に、優しいとかそんなんじゃない。

「おれが、何?」
「なんでもねえ。勝手に勘違いしてんじゃねーよ」
「勘違いじゃないよ」
「もーいいから!今はとにかく昼飯だろ!」
「それもそうだね」

目の前でにこにこメロンパンを頬張る四郎兵衛。何考えてんのかちっともわかんねえ。

「メロンパンおいしー」
「あっそ」

四郎兵衛が言うと本当にうまそうにみえるから不思議だ。や、実際うまいけど、メロンパン。

「ね、ハンバーグ一口ちょーだい」
「……いいよ」



どうやらおれは相当こいつに弱いらしい。


20100901



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