※現パロ





「いっぺー、ヒマ」

なら帰ってよ。そう言いたいところを「だったらゲームする?」と提案する僕は忍耐強いと思う。

「えー、ヤだよ。一平が持ってるゲームつまんないのばっかじゃん」

後ろでギシギシとベッドが軋む音がする。きっと三治郎がごろごろ転がってるんだ。

「じゃあ帰ったら」
「それはヤダ!」

ぼくは君がヤダよ。

「今日は一緒に遊ぶって約束しただろ」
「三治郎が勝手に言っただけでぼくはうんって言ってない」
「え、そーだっけ?」
「そーだよ」

鉛筆を置いて後ろを振り向くと三治郎はベッドにあぐらをかいてきょとんと小首を傾げていた。きっとほんとに覚えてないんだ。三治郎はいっつもそう。勝手に決めてそれを忘れる。そしてへらりと笑うんだ。

「ま、いーじゃん。結局一緒に遊んでるんだし」

お得意の笑顔で「結果オーライだよ」とへらへら笑う三治郎。もうこんなヤツ知らない、宿題に戻ろう。そう決意して机に向き直ると「え、まだやんの」と不満そうな声が後ろから聞こえてきた。無視して鉛筆を握ると「遊んでくれないと一平の部屋にからくり仕掛けてやる」と恐ろしく明るい声がした。そろそろ振り向くと、にっこり笑顔の三治郎。

「一平、遊ぼ?」

こうなった三治郎には逆らえない。溜め息をついて椅子から降りると、三治郎は「わーい、そうこなくっちゃ」とベッドからとび降りた。

「まだ宿題途中なのに」
「だーいじょーぶだって!一平頭いいからすぐ終わるよ」
「そういう問題じゃない」
「じゃあどーいう問題?」
「……もういいよ」

本気で首を傾げる三治郎に言葉もない。三治郎をほったらかしに、テレビ台に閉まってあるテレビゲーム機を出してコードを差すと「……何してんの?」と声がした。もちろん三治郎だ。

「決まってるだろ、ゲームするの」
「えー、ヤダ!つまんない!」
「つまんなくない!面白い!」
「一平が持ってるソフトって育成ばっかじゃん!」

わーわー騒ぐ三治郎を無視して電源をつけるとタイトル画面があらわれた。つづきからを選択してしばらく待つとかわいいゴールデンハムスターが現れる。

「あ、ハム治郎お腹すいてる」
「……そのハム治郎ってのやめてくんない」

横に腰を下ろしながら嫌そうに呟く三治郎。僕は画面から目を離さず「なんで?」と聞く。チーズを選択すると、ハム治郎は嬉しそうにチーズをかじりだした。かわいいなあ。

「なんでも。なんかヤだ」
「三治郎には関係ないだろ。あ、ハム治郎トイレした」
「ほんとやめて」

かわいいハム治郎は三治郎とはほど遠いなあと思いながらトイレ掃除を選択。綺麗になったトイレにハートマークを飛ばすハム治郎。

「ハム治郎は誰かさんと違って可愛いなー」
「誰かさんって?」
「ないしょ」
「……僕、今やってるゲームで次にゲットしたモンスターの名前は一平にするよ」
「何それやめてよ」
「だって一平がハム治郎なんて名前つけるから」
「誰も三治郎を元にしたなんて言ってないだろー」
「悪意を感じる」
「悪意なんてないよ。あ、ハム治郎またトイレした」
「一平のばか」


20100904



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