知らないことに直面する。こういう時、俺はまだまだ自分がガキなんだということを痛感する。まあ、実際十二でガキなんだ。忍術学んで三年目。毎日知らないことの連続なわけで。だから、忍術で知らない事に直面するのは当たり前。
俺が言いたいのは日常生活での知らない事柄だ。まあつまり何が言いたいかっていうと

「両思いが難しいって知らなかったなあ」

そういうことだ。
原っぱで仰向けに寝転びながら呟いた言葉は胸にずしんと重石を置いたように重く乗っかる。悩み事は声に出すとラクになるよと聞いたことあるが、俺の場合は逆らしい。声に出したことによって余計にヘコんでしまう。

思い人と気持ちが通じあい、両思いなんだとわかったのはつい先日のこと。俺の思い人は照れ屋というか恥ずかしがり屋というか、まあそんなところが超絶可愛いんだけど、とにかく恋愛事が苦手なヤツだ。俺から手を握ると真っ赤になる(自分からはしょっちゅう繋いでくる癖に)、抱き締めると暴れだす、好きだと言うと殴られる。こうして挙げていくと、なかなかヒドイ仕打ちだが、全部照れ隠しからくる行動だと分かっているから怒りは湧かない。むしろ可愛い、いとおしい。

と、思っていた。
ったくホント照れ屋なんだから仕方ないなあ、と床をごろごろ転がって悶える程、可愛いと思っていた。それなのに、前向きに働いていた俺の思考はなんの前ぶれもなしに後ろ向きへと方向を変える。キッカケとかそんなものは何もなく、急に不安になる。寂しくなる。
好きなのは俺だけなんじゃないか、実は俺のことなんて好きでもなんでもないんじゃないか。一回そう思ってしまうともう駄目だ。悪い方へ悪い方へと思考が働く。暗闇に包まれたかのように気持ちが落ち込んで真っ暗になる。こういう時どうしたらいいんだろう。落ち込んだことはこれが初めてじゃない。実習で失敗した時、試験の点数が悪かった時、家族が恋しくて泣いてしまいそうになった時。俺はまだ十二年しか生きてないガキだけど、この十二年に落ち込んだ回数は数知れない。さあ、俺は落ち込んだ時どうしてた?いつもどうやって立ち直ってたんだっけか。

立ち直る方法を思い出そうと必死で頭を巡らす。みしり、と草を踏みしめる音がした。みしり、みしりと振動が仰向けに寝転ぶ自分の体に伝わる。
ああ、そうだ。思い出した。

「なんの相談もなしに一人で悩んでんじゃねえ、この馬鹿っ!」

真っ暗な暗闇に光が射す。俺を助けてくれるのは、いつだって作兵衛だ。


20101017


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