逢魔が時

□耽羅ー序章
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これが幸せだと思っていた。
あなたに会うまでは・・・

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「海岸を散歩してくる」

「ああ・・」

子供を寝かしつけ、そう夫に告げると、気のない返事が返ってきた。

いつもの事・・・
そう言い聞かせて、一人海岸を目指して歩いていった。

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大学を卒業して、しばらくはOLをしていた。
世の中が華やかに浮かれていたころで、私自身もそれを謳歌していた。

当たり障りのない人と恋をし、友人や親に薦められるがままに結婚。
こんなものかな・・・と思いつつ、これが幸せなんだと自分に言い聞かせていた。

働きながら、夫や二人の子供の世話をし、気が付くと口紅をさすことも忘れていた。

いつからだろう・・・

夫とは随分長い間、肌を合わせる事も無くなり、会話といえば子供の事ばかり・・・
夕食を終え、後片付けをしなが、ふと居間をみると、ソファで寝転んでいる夫、携帯に夢中になっている子供達・・・

恐ろしく緩慢な日常が、そこにあった。

「世の中の女性はみんなこんな感じかな・・わがまま言っちゃだめだよね。」

そう、自分に言い聞かせながら、ふとテレビをにると、そこには今まで見たこともないアイドルグループが映っていた。

「東方神起」

韓国から来たらしい彼らは、たどたどしい日本語で一生懸命話をしていた。
「ふふ・・・かわいい。」
そして、彼らの歌を聴いたとき、涙が頬をつたった。

「え?!」
びっくりした。

今までアイドルにはまるで興味が無かった私は、涙する自分に驚いた。
あわてて涙を拭い、何事も無かったかのように、緩慢な日常に戻っていった。

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