言魂

□悲しみは幾度無く
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雨が降る。

黒い空から、黒い雨。

戦争の終わりと、俺達の負けを告げる雨。

「なんだってんだ」

もう二度とヒカリを見る事のできない左目。
それだけなら、何も言うことはなかった。

寧ろ、目の一つや二つ、失ったって構わなかった。

「なんで、アイツがいねーんだ!!!」

ドン―

痛みなんて感じなかった。
ただ、誰の物ともいえない、自分の血が、壁を伝って流れていく。

『晋助、晋助』

ふと甦る、過去の記憶。

『見て!!』
「なんだよ、蝉じゃねーか」
『蝉ってすごいよ』
「はぁ?いきなり何言い出すと思ったら…。
フン…くだらねェ」
『くだらなくないよ。
私、蝉みたいに生きたいの』
「バカじゃねェの、お前。
蝉なんぞ、長くて一週間しか生きられねェじゃねーか」

あの日も、変な事を言い出したアイツに文句を言ってた。

『でも、蝉は生きている間、力の限り生きてるでしょ??
短くても、必死に生きて生きていきたいなって。
でも、晋助も一緒だからね』

そう言って笑った。
それが、アイツの最後の姿だ。

いつか起こると思ってた。
だが…
絶対起こらないとも思ってた。

発見されたのは、見るも無残なアイツの死体。
俺は、目を逸らすことができなかった。

許さねェ。
俺は、この世界を、天人共を。

ぶっ壊してやる。

仲間も、お前も、全て失った。
俺に失うものは、もう何もない。

でも、もう一度だけ、願ってはいけねェか??
もう一度、お前の笑顔が見てェんだ。

もう一度、お前を、抱きしめて、あの日言えなかった言葉を…。



『お前と俺は、ずっと一緒だ』









END
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