PRAY

□prayer1
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「…っとに使えないな!」
「……」
「何か言ったら?」

並盛中学、校舎裏にて。
黒縁の丸眼鏡に三つ編みの少女が集団の中心にいた。
こんなに群れていると、風紀委員長と呼ばれる男に弱者強者関係なく咬み殺されるのが常ではあるが…生憎彼は今日不在であった。
肩を押され、地べたに体が倒れ込む。
華奢な苛められっ子の姓は宇佐美、名はさくら。

「黙んないでようさぎの宇佐美ー」
「金はかーね!」
「…って…いよ」
「ぜんっぜん聞こえねー」
「……お金…持って、ないよ…」
「はぁぁあ!?ふざけ」

がしゃん…。
その場にいた全員が一斉に振り返る。
視線の先にはゴミ箱を落とした、一人の男子生徒。

「なんだ、ダメツナか…」
(ダメツナ…、沢田くん?)

明らかにほっとしたように息を吐いた女子生徒たち。
さくらは集団の壁の向こう側にいるであろう人物を思い浮かべた。
ふわふわした日だまり色の髪、大きな瞳と…あまり頭が冴えていないように見える顔。




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