Clap log

□HAPPY Birthday
1ページ/1ページ



一度も道を間違えずに歩むことが出来たなら、どんなに良かっただろう。

「またつまんなそうな顔をしてるよ?」
「‥悪かったな。」
「今日が何の日かわかる?」

俺の生まれた日‥。おまえはいつもこの日を嬉しそうに祝福してくれる。だが俺は、この日を疎ましいとしか思えない。ただ、何故生まれてきてしまったのか、それだけが‥

「生まれてきた事に後悔してるの?」
「いつもいつも‥心を読むな。」
「私は嬉しかったのよ、16年前、あなたが生まれ来てくれて。」
「本気でそう思っているのか?」

16年前の砂が誕生を心待ちにしたのは新たなる兵器、守鶴であって俺ではない。それに母親の命を犠牲に生まれてくる俺なんて、テマリやカンクロウは望まなかっただろう。

「例えば、俺が死んだらどれだけの人が悲しんでくれるだろうか。」
「悲しいよ私は。というか誕生日に縁起の悪いこと言わなーいの!」
「…」
「‥自分の死を悲しんでくれる人が一人でもいるって、私は幸せな事だと思うよ?」

だって、それは必然だとは言えないのだから。

「ねぇ我愛羅、私ね、生まれたてのあなたをこの胸に抱いた時になんて思ったと思う?」
「‥さあな。」
「なんて私は馬鹿なんだろうって、思ったよ。」

善も悪も等しいままの小さな命を前にしたら、損得とかそんなのばかりを気にしてる私達はなんて愚かなんだろうって呆れた。でもね、

「だからこそ守れる自分になりたいと思ったの。」
「…俺の生は無意味では無いのか?」



パンッ、パンッ



少し重かった空気にはそぐわない軽快に弾けるクラッカーの音。そこには大きなプレゼントを抱えたテマリと何やら恥ずかしそうにするカンクロウがいた。

「我愛羅、お誕生日おめでとう!」
「おめでとうじゃん!」
「おまえら…」

テマリもカンクロウも、何故俺に"おめでとう"なんて言えるんだ。恨まれても仕方が無いのに…仕方の無い事もしてきたのに。だからこそ人の何倍何十倍も2人には感謝しなくてはならないんだとは思う。

「"おめでとう"と言われる事は当前じゃないんだと、感謝すべきなんだと誰よりも感じる事が出来るのはね、我愛羅が沢山の遠回りをしたからなんだよ?」
「…だから、心を読むな。」

確かに、そうなのかもしれない。一度も道を間違えずに歩むことができたなら…、そんなを考え自体が馬鹿馬鹿しくて、俺はもっと、今ある身近なモノを大事に大切にすべきなんだと思う。無いものばかりを求めるのではなく。

「我愛羅。」

ほんの少し柔らかな表情を浮かべ始めた我愛羅に、私は額の愛の字にそっとキスを落とす。

「っ…皆の前で///」

滅多に拝むことのできないあなたの照れ顔が妙に新鮮でおかしくて愛しくて…、やっぱり君の存在は私にとって掛け替えの無いモノなんだなと改めて想う。

「心から言うよ」


HAPPY BIRTHDAY



(我愛羅、この世に生まれて来てくれてありがとう)
(俺を必要としてくれてありがとう)
(…おまえらいちゃついてんな!)
(俺も彼女欲しいじゃん)
((当分無理だ!))
(ガーン)




.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ