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□無知な君に愛のささやきを
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人を待つのはあまりに淋しく、人を待たせるのはあまりに哀れで、それを痛いほど知っている君は朽ちぬ体を手に入れた。禁忌を犯した出来損ないの人形に誰もが恐れ平伏したのは言うまでもなくて。
(暁の連中は別だけど。)


「結局、どいつもこいつも美学が分からない奴ばっかだったな。」
「淋しいの?」
「そんなんじゃ…ねぇよ。」


血の海を踏みにじる彼は些か表情を曇らせる。自分を永遠にするにはまだ若過ぎて、畏怖される存在としては優し過ぎたのかもしれない。触れた頬はいつもに増して冷やかで、目尻から伝う血が涙のように見えて。そんな淋しそうな君が、少しだけ人間臭い君が‥好きだったのかもしれない。


「何年経っても変わらないものがあるって素敵な事じゃない?」
「‥テメェなんぞに同情されちまったら俺も終いだな。」


同情なんかでも慰めなんかでもないんだよ。命の重みを忘れた連中で溢れた暁の中で、喜びも悲しみも、体も心も、幼き日から永遠(トワ)のものにした君の酔狂な位の一途さに、私は羨望した。私なんか‥人に愛されたいと願う癖に自分以外の誰かはクズだと思っていた時もあって。だけどそれを素直に悲しいとは到底思えなくて。これを歪みというならば、私はまさにそれ。だから‥だからこそ君を手に入れたいの。例え無いモノねだりだなんて言われても気にはしない。


「"サソリ"を仕留めるにはアルコールが一番よね?」
「んなもん俺にかけても死なねぇぜ?」
「あなたを仕留めるには‥何が必要?」
「俺を殺るなんざ一生無理だ!」


喉を鳴らし嘲笑う。私の企み(ココロ)なんかまるで気付いちゃいないからなんとも憎らしい。‥見てなさいよ、貴方の全てを私で支配させてみせるから。


「そんな風に勝ち気なサディストでいられるのも今のうちよ。」
「あ゙ぁ゙?」
「貴方は私が仕留めるわ。」
「はっ、そりゃ楽しみだな。」


無知な君に愛の囁きを
無知な君に愛の囁きを



(テメェ、何を企んでる?)
(いつかわかるわよ。)
(今この場で言え。)
(そうね…………)
(勿体ぶるな。)
(ふふ、教えてやんないよ!)





(少なくとも今は‥ね。)






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