Clap log

□残された未来に望むモノ
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死の瀬戸際に立たされると走馬灯が如く大切な思い出が蘇るとか言うけれど、そんなの嘘。腹部から血が溢れ出す私の脳裏に浮かぶのは、照れ隠しをした仏頂面な貴方の横顔。


「我愛羅…」


貴方は死した私を見たらどんな顔をするのかしら。きっと素直に泣けない分、歯を食いしばりながら心の中で悲鳴を上げるように涙を流すのかな?ううん、もしかしたらそんなの私の思い上がりかもしれない。…でも、その方がずっといい。悲しむ姿なんてもう2度と見たくは無いの。貴方は貴方らしく、仏頂面なままでいいから…、私なんかのために悲しまないで、ただ…


「幸せに…生きて。」


どうか、どうか……幸せに。


「…お日様」


もし独り淋しく啜り泣いている彼を見付けたなら、ほんの少しでいいからその背を温めてあげて。


「…小鳥さん」


もし深い暗闇の中で迷子になっている彼を見付けたなら、日の当たる場所まで導いてあげて。…木や砂は疲れた彼を少しの間そっと休ませてあげて。どうか…


「我愛羅を独りにしないで…」


森(ココ)に私の想い、預けたからね。我愛羅を…頼むよ。


「おい。」


あぁ、最期の最期に貴方の声。貴方はそこにいるの?


「…おい!」


好きな人に看取られて逝ける、これほど幸せな事はないけれど…お願い、悲しい顔をしないで。


「おい、しっかりしろ!」


どうか………幸せに。



「…起きろ!」
「イデデテテテテ…!」


頬っぺたの痛みと共に覚醒した脳がまず捕らえたものは、私の顔を覗き込んだままキョトンとする我愛羅の顔で。大怪我をしていたはずの腹部には痛みは疎かかすり傷すら付いてはいなかった。


「あ…れ?夢?」
「随分と派手にうなされていた。」
「……!」


あ〜思い出した。風影になった我愛羅が暁にさらわれて…良くない噂を聞いて丁度憔悴しきっていた所に貴方は帰ってきて………久々に一緒に寝て………そうだ、キスをされてから妙に安心しちゃって、それで寝ちゃったんだ私。


「寝言うるさかった?」
「俺の名前を盛んに言っていた。」
「…そうかもね。」
「長いこと…心配かけてすまなかったな。」


そういいながら私の涙の跡をペロリと舐め、以前は見せ無かったような穏やかな笑みを浮かべる。私の、生きた心地のしなかった心臓がトクントクン…と鼓動を速める。


「我愛羅」
「?」
「私は我愛羅の幸せだけを祈ってるんだからね?」
「それは俺も同じだ。」


カーテンの隙間から零れる日を浴びキスをする。ふと窓の外を見遣れば小鳥が頭を傾げながらさえずり、日に向かって飛び立つ。…深い暗闇に迷い込んだのは私の方だったのかもしれない。


「生きて帰ってきてくれてありがとう。」


貴方の死を聞いて感じたのは、貴方の存在の大きさ。貴方はいつの間にかすっかり私の中にいて、いなくなったと知れば大きなブラックホールが出来たように色んな感情と一緒に生気までも吸い込まれてしまったみたいだった。


「私の傍にいてくれてありがとう。」


自分の死を夢見た時にすらやはり貴方の事ばかりで、貴方の幸せだけをひたすらに願った。…自分の死に場所に我愛羅を託したのはさすがに笑えるけれど。でも、本当に貴方には、貴方だけは幸せになってもらいたいの。


「…いつも待っていてくれてありがとう。」


少し照れ臭そうに仏頂面する彼が泣きたいほどに愛おしくて、笑い返すのがやっとだった。


「やっぱりね…」
「ん?」
「2人で幸せになろう?」
「当たり前だ。」


我愛羅も私も、一緒に存在していられることは実は奇跡に近い事かもしれないから。私達に残された時間があとどのくらいかなんてわからないけれど、今は2人で、ううん、いずれは…


「ねえ…」
「ん?」
「私達の子供って可愛いかな?」
「フッ…励むのか?」
「う…うん!」


私達の子供にもこれでもかーって位の愛を振り撒いて、幸せを家族で分かち合えたら良いな。







(今日は寝かせないからな。)
(えーーーー)
(なんてな。)
(……その顔反則///)
(おまえの存在も十分反則だ。)
(っ///)





(こんな素朴な幸せがいつまでも…続きますように。)




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