小説

□バッテリー
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◇◇◇


「ほら、隆也。もっと足を開けよ」
「うあっ、何で、何でこんなことするんですかっ、元希さんっ」
「うるせー、いいから、もっと足開けよ、挿れずれーなー」
「や、やめて下さい、お願いします」
「るせーよ、おまえは的なんだから、オレらピッチを受け止めとけばいいんだよ」
「そ、そんな的なんて、してませんっ」
「同じ事だろ。バッテリーなんてもんは隅から隅まで知り合っていなきゃー、気持ちなんて通じあわねーんだよ」
「だからって、こんなっ、くうっ」
「おまえ、オレのキャッチし続けてーんだよなー。所詮、俺の女房役じゃねーと、レギュラー取れねーんだろう?だったら、少しは旦那に尽くしてみてもいいんじゃねーの?」
「うっ、うあぁぁぁ」
「隆也…」


あの頃の榛名は何に対しても噛み付く様な、猛獣みたいな空気を纏っていた。
的であるオレは、日々、全力投球を受けてあざだらけになっていた。
それだけでも大変だったのに、いつしか体を求められる様になった。
しかも、これも的の役割だと言う。

それって性欲処理係だという事に気がつくまでには、しばらくかかった。

何故か、たまに榛名が苦しい顔をしたり、優しく抱く時もあったから、誤解をしたくなる時もあったけれど、バッテリーを解消して以来、連絡が一切無くなったから、やっぱり性欲処理として利用されただけなのだろうと、納得した。

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