小説
□雨宿り
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「おまえは、あのピッチャーの母ちゃんか?」
「母親と言うよりかは、女房の間違いでしょう。バッテリーなんだから」
「女房ね〜」
急に傘を持っている腕を取られて、引き寄せられた。
「わっ!」
前につんのめり、気がつくと榛名の胸の中に納まっている。
「隆也、オレのこと、煽ってる?」
「はあっ?何、言ってるんですか?」
榛名の心臓の音が耳元で聞こえ、ドキンドキンと早鐘を打っている。だけどオレも負けない位の早さだろう。
「確かに今、バッテリーを組んでるのはオレじゃねーけど、おまえはオレのモノだよな〜?」
「モノとかって何ですか。オレは誰のモノでも無く、オレのモノですから」
「るせぇよ、おまえは」
胸から顔を離されて、急に唇を塞がれる。
「ちょっ、はる・・、くっ・・・は・・・」
文句は全て榛名の口中に吸い取られる。
と思ったら、熱い舌が俺の口内をまさぐりだし、舌をからめられる。
「んっ・・・」
逃げれば逃げるほど、激しく追いかけてくる。
この人はいつもそうだ。戸田北の頃から。
オレが追いかければ逃げるくせに、あきらめて離れて行ったら、こうやって執拗に追いかけてくる。
オレとの付き合いも、この人にとっては、狩りの様なものなんだろう。
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