小説

□依存症
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隆也はちっこいくせに小生意気で、でも一生懸命で、いつも必死で。
オレら上のもんから見たら、かわいくてしょーがない訳で。
戸田北のマスコット的存在だって判ってねーのは、隆也だけなんだろーなー。

監督だって、狂犬の様なオレに隆也をぶつけてきたのは、巧妙な作戦だった訳だよな。
監督の思惑通り、すっかりオレも骨抜きだし・・・。
くそっ、監督。ああ見えて策士だぜ・・・。

隆也はつつかれた腹をなでながら、ぶつぶつ言っている。

「隆也、いてーの?」
「元希さん・・・、そりゃ、痛いに決まってるでしょ。まぁ、オレの技術不足が悪いんですけど」
「・・・ふ〜ん」

むっとした口ぶりの隆也を見ながら、またひとつ、キシリトールガムを口に入れた。

「元希さんっていつもガム噛んでますよね。なんか大リーガーみたいですけど、それ歯の為ですよね」
「ん?歯の為もあるけど、一番はイライラ解消の為かな」
「イライラ?」
「そっ。タバコの代わりみたいなもん?」
「元希さん、タバコなんて喫うんですか?」
「喫うわけねーだろ、スポーツマンにはご法度だ」
「いや、その前に未成年ですから」

ぼそっと突っ込む隆也が、かわいい。

「大体、あんたみたいな俺様に、イライラする事なんてあるんですか?」
「・・・あるね」
「へっ?」
「・・・その傷、少し冷やした方がいいな。隆也、こっち来い」
「えっ?」


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