小説3

□媚熱
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◇◇媚熱◇◇


桜は満開、春真っ盛り。

始業式を終え三年になったオレは、自室のベッドでダウンしていた。

「元希、言っとくけど私とお母さん、今日から『桜満開お花見バスツアー』に行くんだから、あんたの面倒なんてみれないからね」

「・・・・・」

「おかしいわね〜。バカは風邪ひかないって言うのに」

「るせー!桜見にでも、あの世にでもとっとと行って来い」

「はあ〜、何がそんなに機嫌悪いんだか」

盛大にため息をつくクソアネキ。

あたりまえだろ。
ホントなら今日はタカヤに会いに行こうと思ってたんだ。
ここんとこ、なんだかんだでタカヤに会えてねーから、この熱は禁断症状が出たとしか思えねー。

看病なんて、いらねぇ。
そんなにオレに元気になってほしいなら、タカヤをここに連れて来い!

小声でぶちぶちと悪態をつくオレの額に、アネキが手を置いた。

「触んな」

「はいはい、まだ熱があるみたいね〜。どうせ知恵熱か何かでしょ」

るせー。
確かに昨日は遅くまで、オレとタカヤの将来について考えてたけど・・・

だって、オレ、もう三年だぜ。

今年は、ドラフトでプロに入る事が決定するのは当然としてもだ。
来年の今頃は、オレとタカヤの関係はどうなってんのかとか、心配しても不思議じゃねーだろー。

「大した事無いでしょうけど、今日は学校休みなさい。ここに食べ物とか置いてくから」

「わーったよ。早く行け」

「後、隆也君に知らせといたから」

「は?」

「元希が熱だしてるけど、明日まで家で一人っきりだって」

「今、なんつった」

「ん?ほら、お父さん、出張だし」

「んなこた聞いてねえ。誰になんの連絡したんだ?」

「だ・か・ら、隆也君に元希が熱出して寝込んでるからってメールしといたの。これで隆也君来てくれなかったら、あんた愛されてないから諦めなさい」

「てんめぇ、このクソアネキ―!!」

アネキに向かって投げた枕は、素早く閉められた扉に遮られ、その場に力なく落ちた。

ちっ、仕留めそこねた・・・

オレ様の剛速球でも、あのアネキだけは仕留められた事がねぇ。



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