小説

□雨宿り
1ページ/5ページ

「あんた、バカですか」
「なんだよ、隆也。バカって言った方が、バカなんだぞ」
「はぁ〜、そんなところがバカだって言ってるんです」


◇◇雨宿り◇◇


部活が終わって三橋と帰ろうとした時、しとしとと雨が降る校門前に榛名が立っていた。
傘を左手でさしているので、かろうじて左肩は濡れていないが、全体的にしっとりと濡れそぼっている。
そんな姿に色香を感じて、見つけた途端、胸がドキンと跳ねた。

「あっ、榛名サンだー」
「あー、三橋、悪い。先に帰ってて。この人、追い返さなくちゃいけねーから」
「え?う、うん。いいよ、先、帰ってるよ」

おどおどと見上げる三橋に、榛名はにっこりと笑い、頭をなでる。

「おぅ、悪いな。隆也はちょっと借りるぜー」
「は、はいっ」
「何でオレが、あんたに借りられなきゃいけないんですか。言ったでしょう。とっとと帰って下さい」
「あん?それが先輩に言う口ぶりか?」

三橋の頭の上にあった手をこちらに向けてきて、思いっきりデコピンをかまされた。

「いってー!投手の握力で思いっきりやらないで下さいっ!!」
「榛名サンは、やっぱり、かっこいー!」
「どこがかっこいーんだ、こんな奴のどこが!?おまえは早く帰れ!!」
「う、うんっ」
「あっ、ちゃんと飯食えよ、風呂入った後は柔軟もしとけよ」
「わかったよー、じゃあ、阿部君、榛名サン、さよーならー」

三橋がパチャパチャと駆けていく。転ぶなよ〜。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ