パラレル2

□タイムリミット
1ページ/17ページ

◇◇タイムリミット◇◇


「西浦・・・高校」

門柱に書かれている校名。

今日から二週間、ここに通う訳だ。

榛名元希、大学三年生。
本日よりここ、このニシウラとかいう高校での教育実習が開始される。

ハッキリ言って、たり〜よな。
オレはガッコのセンセになる気なんて、微塵もねーっつの。

野球推薦で入った大学が、たまたまそんな学部で、教員採用試験の受験資格とやらが取れるらしい。

オレにはカンケーねえって言ったんだけど、例によって秋丸のヤローが、取れるものは何でも取っておいた方がいい。いつまでも野球でやっていけるわけでもないんだからとか、冷めたことを言いやがった。

だけど、オレがセンセ〜?
柄でもね〜。

まあ、教育実習っつーても高校だし、小学生のように手がかかるってわけでもねーだろうし。
実際、オレが高校の頃、教育実習に来たヤツなんていたか?

全く、覚えてねーし。

まあ、いいや。二週間、二週間ガマンするだけでいいんだ。

って訳で、母校の武蔵野に連絡を取ったら、既に教育実習枠は一杯だった。

その後も色々当たってみたが、なかなか空きが無い。

おい、てめぇら!
んな教育実習なんかやったって、ぜってぇ、教師になるヤツなんていねーだろーが!
教師になるつもりがねーんなら、とっととその枠、オレ様に譲りやがれ!

と、相手が分かれば交渉するところだが、残念ながら顔の見えない相手に絡むこともできない。

武蔵野に教育実習が決まっている秋丸には、もちろん真っ先に交渉したが、既に教師連中に根回しが済んでいるらしく、変更できる段階ではないとかわされた。

こいつ、野球に関してはオレの金魚のフンみたいなもんだったけど、他の場面ではするすると巧く世渡りしているところが、実に腹立たしい。

てな訳で、捜索範囲を拡げたところ、ようやくある高校で拾ってもらえたという訳だ。

それが「西浦高校」

武蔵野と同じ学区で、結構、頭がいい学校だということ位しか知らねー。

そんな頭のいい学校の生徒に、オレが教えられることなんて、あるのか?

まー、いいか。教育実習なんて、所詮、パフォーマンスだもんな。

「あの、おはようございます」

「えっ?あ、おあよう・・ございます」

振り向くと、私服の女子達がくすくす笑ってこちらを見ている。

なんだよ。急に声かけられたから、変なになっちまったじゃねーか。

そう言えば、視線を感じる。

周囲を見回すと、登校途中の生徒達がこちらをちらちらと伺っている。

オレと目が合うと、「キャッ」て頬を赤らめたりしている。

「・・・・・」

これ、マジで楽しい二週間になんじゃね〜か?

オレは意気揚々と西浦高校の門をくぐった。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ