パラレル2
□タイムリミット
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◇◇タイムリミット◇◇
「西浦・・・高校」
門柱に書かれている校名。
今日から二週間、ここに通う訳だ。
榛名元希、大学三年生。
本日よりここ、このニシウラとかいう高校での教育実習が開始される。
ハッキリ言って、たり〜よな。
オレはガッコのセンセになる気なんて、微塵もねーっつの。
野球推薦で入った大学が、たまたまそんな学部で、教員採用試験の受験資格とやらが取れるらしい。
オレにはカンケーねえって言ったんだけど、例によって秋丸のヤローが、取れるものは何でも取っておいた方がいい。いつまでも野球でやっていけるわけでもないんだからとか、冷めたことを言いやがった。
だけど、オレがセンセ〜?
柄でもね〜。
まあ、教育実習っつーても高校だし、小学生のように手がかかるってわけでもねーだろうし。
実際、オレが高校の頃、教育実習に来たヤツなんていたか?
全く、覚えてねーし。
まあ、いいや。二週間、二週間ガマンするだけでいいんだ。
って訳で、母校の武蔵野に連絡を取ったら、既に教育実習枠は一杯だった。
その後も色々当たってみたが、なかなか空きが無い。
おい、てめぇら!
んな教育実習なんかやったって、ぜってぇ、教師になるヤツなんていねーだろーが!
教師になるつもりがねーんなら、とっととその枠、オレ様に譲りやがれ!
と、相手が分かれば交渉するところだが、残念ながら顔の見えない相手に絡むこともできない。
武蔵野に教育実習が決まっている秋丸には、もちろん真っ先に交渉したが、既に教師連中に根回しが済んでいるらしく、変更できる段階ではないとかわされた。
こいつ、野球に関してはオレの金魚のフンみたいなもんだったけど、他の場面ではするすると巧く世渡りしているところが、実に腹立たしい。
てな訳で、捜索範囲を拡げたところ、ようやくある高校で拾ってもらえたという訳だ。
それが「西浦高校」
武蔵野と同じ学区で、結構、頭がいい学校だということ位しか知らねー。
そんな頭のいい学校の生徒に、オレが教えられることなんて、あるのか?
まー、いいか。教育実習なんて、所詮、パフォーマンスだもんな。
「あの、おはようございます」
「えっ?あ、おあよう・・ございます」
振り向くと、私服の女子達がくすくす笑ってこちらを見ている。
なんだよ。急に声かけられたから、変なになっちまったじゃねーか。
そう言えば、視線を感じる。
周囲を見回すと、登校途中の生徒達がこちらをちらちらと伺っている。
オレと目が合うと、「キャッ」て頬を赤らめたりしている。
「・・・・・」
これ、マジで楽しい二週間になんじゃね〜か?
オレは意気揚々と西浦高校の門をくぐった。
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