novel

□会いたい。
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本日の仕事が終わり、俺ことネズミは帰路についている。

久しぶりに立て続けで仕事が入り、今日が漸く最終日。

早く帰ってベッドでゆっくり眠りたい。

俺は歩く速度を早めた。同時に、頬にあたる冷たい風が勢いを増す。

口から息を吐き出せばそれが白となり空気中に消えていった。

そういえば。

うちの白いお姫様は何をしているんだろう。数日間帰れなかったが、食事はちゃんととっていただろうか?

俺がいない間、戸締りは怠るなと強く言っておいたが、守っているのか。(絶対に守っていない気がする。)

…だんだん不安になってきた。

小走りで道を抜け、地下への階段を駆け降りる。扉の前に立ち、ノブを回すと簡単に開いた。

…あのバカ。

中を見ると真っ暗で。まぁ…暗かろうが明るかろうが視覚に問題はない。

微かに人の、紫苑の気配を感じそちらへ歩を進め、息を飲んだ。

本を片手に持ち、地面に倒れ伏す紫苑が目に入ったから。

「…っ!紫苑!?どうした!?」

慌てて駆け寄り、紫苑を抱き起こす。口許に手を翳し、呼吸を確かめる。

規則正しい呼吸。よく見れば、表情も血色が良く穏やかだ。

どうやら子ネズミ達に朗読してやっている途中で眠ってしまったようだ。

俺は安堵の息を吐き、安心したせいか怒りが込み上げてきた。どうやらこのお坊っちゃんには、きつく言ってやらなければ分からないようだ。

「おい、紫苑起きろ。」

そうと決まれば即実行。俺は紫苑の頬を軽く叩き覚醒を促す。

だが紫苑は少し身動ぎするだけで。俺はもう一度呼び掛けようとし、止めた。


「ね…ずみ…」

はやく、かえってきて。


(あんたってやつは…。)



嘆息し、紫苑を抱き上げる。そのままベッドへと、そっと下ろしてやる。そのまま俺も潜り込む。



「…明日、みっちり叱ってやるからな。」


紫苑を抱き締め、その胸に顔を埋める。石鹸の香りが広がった。




「…俺もあんたに会いたかった…」

なんて。起きているときは絶対に言ってやらない。

「おやすみ、紫苑。」


紫苑の心地よい温かさに身を委ね、俺はゆるゆると瞼を落とした。








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紫苑は一人で寂しかったのです。扉を開けっぱなしなのは何時もの事です。ネズミはツンツンデレ。


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