MOTHERシリーズ

□ドッキリ?
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愛する双子の兄が天へと召されていった。母親の声のする天へと、まるで後を追って走ってゆくように。子供の内から家族の死を二度も経験した少年・リュカは悲しい運命を越えて針を抜いたのであった。強い信念と祈りを捧げ、彼の兄よりも一本多く。
リュカは最後の針を抜いた後もなお、愛する者の温もりを覚えていた。敵と戦い続けた彼が忘れかけていた筈の感覚であった。
針を抜く時に込めた感情は、それを思い出したからこそ込められたものであった。愛しい存在同士がお互いに笑い合って過ごせることを、そして、全ての生命が真実の幸せを得られることを祈ったのだ。

リュカは、針を抜いた後にすぐ気を失ったようであった。無理はない。操られていた実の兄は、弟を相手に多大なダメージを与えた。ヒナワの声が届かなければ逆に殺されていたかも知れない程残虐で、無機質に。銃による傷はとても痛々しい。体内には、PKLOVEから受けた痛みが這いずり回っている。そのため、戦った直後に気を失わなければ身体はもたなかっただろう。





「リュカーー、朝だぞーーーっ!!起きろよーーー!」

「……ん、クラウス……」


とてつもなく大きく、どうしようもなく懐かしい声がリュカの耳に入った。我が家の匂いも漂う、暖かな空間であった。意識ははっきりとしていないものの、その声がクラウスのものだということだけは瞬時に理解できた。彼は瞼をゆっくりと開き、目をごしごしと擦った。


「んん……おは…よ……」

「おはよう、リュカ!」


完全に目覚めた彼が見たのは、紛れもなくクラウスの顔であった。そして、その顔の隣には大きな板がある。それは、プラカードだろうか。
そこには、とても巨大な文字が記されていた。

<ドッキリ大成功!>


「……ドッキリ…?何のこと?」

「そうだよ、リュカ。お前は引っかかってたんだ。最初から」


リュカはどうやら何も理解出来ない様子だ。今まさに奇跡が起きていることにも気づかない。
それに堪えかねたクラウスが発した言葉。


「僕は、死んでなんかいない。いなくなった訳じゃないんだ。……ちゃんと、此処に居る」


そう、クラウスが目の前に居る、それ自体が奇跡なのである。
彼とは激戦したのだが、そもそもそれが原因でリュカは気を失っていたのだ。そして、その最中に自ら雷撃を浴びたクラウスはその衝撃で死んだ筈だ。
しかし、目の前には生きた彼が居る。かつての表情豊かな、少しせっかちでもある彼が。誰に操られるでもなく。
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